人が人を好きになる不思議について、おもしろく紐解いてくれる小説でした。

 いや、まあ、兎に角面白かったですよ。有り難う。と、お礼が言いたくなる小説でした。

 この小説が私を心から楽しませてくれた訳は、安心して読むことができたからだと思います。

 他の人も書いているように、まず文体、文章がしっかりしていて読みやすい。
 表現力が豊かなので行間の文字でない文字が浮かんでくる。

 読者に、人には好きな相手ができるという、誰でもが持つ感情のドキドキと切なさ、嬉しさ悲しさ、葛藤に共感を覚えさせつつ、解決の為には何が要るか、どうすれば良いかをちゃんと教えてくれてから物語を前に進める主人公の生き様は、言うなれば、恋人同士に生じた誤解やトラブルを解決するための一つの手段、或いは方法を教えてくれる、恋愛の指導書と言えるのではないでしょうか。

 未だ、恋知り染める前の女性達は、この小説に登場する男性像によって、男の思考と感情について学ぶことができるだろうし、(男はセックスだけがしたくて、愛だ恋だと騒ぐ奴が多すぎるとか)男は紳士である事や気遣いについて学び、女性が持つ見栄や感情の複雑なネジレについて、キャパシティが必要なこと、価値観の見いだし方についても知ることができます。
恋愛で生じた問題にはリスクを覚悟で立ち向かう勇気を持つことが、未来のために最も正しい選択肢に導くというメッセージが込められている小説だと思いました。

 蛇足ですが――作者のウィットに富んだ表現力の一環である『致死量』は秀逸で『もはや、ときめきが致死量だ。週末まで無事に生きられるのだろうか。』に頭を射貫かれて笑い、呆けてしまいました。こんなものが随所に転がっているので最後まで読むのはとても大変でしたが、読後感は本当に〇っ〇〇しました。

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