この狂気が、たまらなく愛おしいんだ。

思えば自分の青春時代ってのはどんなだったかな。
めちゃくちゃ普通の青春時代だったような気もするしでもなんか人とは違ったような気がするし、よくわかんない。

『いたずら電話』

に描かれている青春からは、狂気の匂いがぷんぷん漂う。
多分普通じゃない。
でも全部解る。
普通じゃないのに、解ってしまう。解ってしまう自分が怖い。そして解ってしまうからイイダさんに感情移入した。私は感情移入しすぎて、ドキドキしたし、興奮したし、ちょっとアレな気持ちにもなって、ヒロインのキノシタさんに恋をした。
もう、全部なにもかもすべて捧げて、彼女の思うとおりに生きたいと思った。
キノシタさんが救われるなら、なんでもやれると思った。
なににだってなれると思った。
だからキクチ(あだ名はキムチ)さんの気持ちも凄く良く解るし、代わりたいとすら思った。
主人公イイダさんからすれば、被害者のキクチさんになって、彼女を束の間気持ちよくしてあげたかった。

愛ってなんだろうねって話なんだけど、イイダさんは確かに愛していたし、キノシタさんも愛していたと思う。二人は相思相愛だったのかも知れないしそうじゃないのかも知れない。

差別。性行為。破壊衝動。突発的自傷。生きたい。死にたい。狂いたい。普通で居たい。幸せになりたい。
そう、多分幸せになりたい。それだけなんだ。でもそれだけがたまらなく、遠いんだ。
その距離があまりにあるから、すれ違うってレベルじゃなく、まったく違うところへ愛を求めたりするんだ。

だから私はえげつないこの愛の物語が、たまらなく愛おしい。


(私は読後に気分が高揚しすぎて吐きそうになったし、余韻が引くまでレビューを書けなかったその時間およそ2時間)

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