「でも、葬式なんて、残されたもののための儀式ですから」

と「動物好きな男」は言いました。結局、通夜も葬式も墓も、残された者のためにあるのです。

まるで『ノルウェイの森』の最後で僕とレイコさんが行う二人っきりの葬式のように、それは何の宗派にも何の形式にもとらわれない葬式でした。それは喪失を抱えながら生きていかなければならない生者の儀式なのです。

『ノルウェイの森』ではビートルズの歌が時代と雰囲気を代弁したように、この小説では宇多田ヒカルの歌が、作者の思いのメタファーとなっています。あいにく私は最近の宇多田ヒカルに詳しくないので分かりかねますが(「First Love」とか言ったら年齢バレるか……)、きっと分かる人からしたらこの作品はもっと楽しめるものだと思います。