嗜虐性の裏に見える、人間の可能性

 物語は、終始狐のお面をつけたままで、決して外すことのない転校生、乙顔がやってくるところから始まります。
 明らかに異質な容姿と、クラスの誰とも交わろうとしない態度。
 存在そのものが浮いて見えることから、次第に彼女は、クラスのなかで孤立を強めていくのですが──?

 本作の魅力は、よくも悪くも人間らしい汚さと、主人公の成長が描かれているところでしょうか。
 周囲と馴染もうともせず、淡々と日々を送っている主人公。
 クラスを平穏にまとめるため、マニュアル通りの対応を見せる教師や級長。
 妙な言動を繰り返す転校生に反発し、排除しようとたくらむ問題児たち。
 様々な登場人物たちの行動を通じて、人間が本来持っている嗜虐性であったり、慣れ合うだけでは解決しないイジメ問題の本質が見えてきます。

 クラス内の軋みが臨界点に達したそのとき、乙顔がついに立ち上がるのです。彼女がお面を外したその時、いったい何が起こるのか?
 そして、彼女の目的とは?
 物語の結末は、是非あなたの目で確かめてほしい。

 お勧めの、ヒューマンドラマです。