第6話 【地の文に工夫している点はありますか? 】

 まず、死んでいく人の一人称にしたことです(理由は後述)。


 それから、他の作品でもそうですが、「重い内容ほど文章は軽く」を心がけています。この話、間違いなくテーマが重いので、特にそれを意識しました。


 このテーマで文体が重いと、読むのも書くのも辛すぎます。


 人称についてですが、バヤズィットの一人称にしたことで、適度に視野を狭くできたと思います。三人称にすると、説明しなくてはならないことが増え、彼の追い込まれた感じが薄まってしまったかと思います。バヤズィットの知らないこと(イブラヒム・パシャの死の真相とか)を書かなくてもいいというのも、いいですね。


 この話、歴史物である以上、大筋は決まっています。バヤズィットは処刑は回避できませんし、するつもりもありません。そういう話ですが、「死ぬ前にどんな心境の変化があるのか」「物語の最後はどこで終わるのか」が創作のほぼすべてです。そこでハッピーエンドにするために、一人称を選びました。人はどんな形であれ必ず死ぬわけで、それを悲劇と感じるか、何らかの救いを見出すかは主観でしかないのです。だから、この話は処刑される本人の一人称以外では成り立たないと思って書きました。


 以上です!


 興味を持って頂けたら幸いです。

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