第4話かれい に ただよう異世界

来る日も、来る日も、ガキは来る。


そう思っとったけど、次の日に来たガキは泡吹いて運ばれて行きよった。

何しに来よったか分からへん。


でも、それからは誰もん。


次の日、向こうの方に柵ができとった。


遠目に、『立ち入り禁止』って書いとるな。


これって、儂の土地が増えたって事やな。

しかも、儂が涼めるように、風の魔法っぽいのが使われとるし。


さすが、英雄一家は待遇がええ。


でも、あれから三日。

儂は家から出れへんかった。柵におる人間が、遠くから許してくれんかった。

何でか敷地も広がっとるし、風もつよなった。


まあ、食べもん魔法で運んで来るからええけどな。

魔法って便利やわ。

なんせ、冷蔵庫のもんパーやしな。オール電化やから風呂も入れん。


まぁ、儂も出たないから丁度ええけど。


いつも出してもろとったから、着替えの場所がわからへん。下手にいらったら怒るしな。


だから、おんなじスエットのままや。いつもやったら美佐江みさえに怒られるけど、今はおらんからええやろ。


でも、まだ帰ってこんな。

スマホも、アンテナないやろうから連絡もできん。


――って、なんや? メール来とるやん。いつきてたん?


【冒険の世界へようこそ】


今更やな。家おるけど。


【初期設定で、お望みの冒険スタイルを選択できます。なお、このメールを受け取られてから設定をされませんと、自動的にアンケート内容に即したキャラ設定へと移行します】


なんやそれ? 早よ言ってゆうてんか。


って、儂。当然時間切れやな……。今見たし。


【アンケート結果から、あなたは『異世界でゴロゴロ。家族を守る』キャラとなりました】


……儂、何て答えたん?


これなんなん? あれ? 続きあるん?


【なお、あなたの場合【家族を守るための力】は、三日間貯めた力が自動的に使われます。家族がピンチに陥った時、その力は極大化されて強制発動します】


なんなん? 三日間ためた力って、儂なんも貯めてないで?


って、ええ!?


なんか儂いきなり、空の上やん? 落ちてるやん?

なんやこれ? どうなってるん!


けど、不思議と熱くも痛くもないな。


あっ、下におるのは美佐江みさえ達やな。

って事は、あれが魔王? 巨大でっかすぎやで、ピンチやん!


あっそうか。だから儂、落ちとるんか。


家族守るために。


そら、しゃーないな。


って、力!?


何? 儂、何ためた?


快便やったし、えーっと。あと何があるん?


って言うか、儂。

落ちとるけど、このままやと魔王直撃コースやな?


落ちたら、それだけで死亡やな?


あっ、そうか。脂肪や! 死亡と脂肪をかけとんのか!


なるほど!


――って、三日間貯めた脂肪で何できるん! 脂肪で死亡って、健康診断か! 三日分のメタボで役立つんか!


もうええ。儂は父親と旦那や! アイツら守って死ぬなら本望や!


まさるさとる美佐江みさえ。お前らこっちで頑張りや。儂は魔王倒した英雄として、祭られるやろうけど、スエットだけは堪忍かんにんやで。

ちょこちょこっと加工しといてや。英雄っぽいの頼むで。


そや、せめて格好かっこだけつけとこか。

やっぱりウルトラキックとかで倒さなな。


あっ、なんで?

ただ、ふわっと着地しただけやん。


魔王の鼻に。


――って、これ。魔王倒れとるんちゃうか?

儂、なんかした? メタボで魔王も死んだんか? でも、腹出たまんまやで?


ていうか、魔王以外も倒れとるやん!


泡ふいて……。


「あなた! スエットは毎日着替えてって言ってるでしょ! 加齢臭がひどいんだから! 私達はもう慣れたけど、あなたのは災害レベルだって言ったでしょ!」


あっ、そうか。でも、その鼻栓にツッコんでええ?


でも、儂。


家族守ったやん。


こんな話、クサイかもしれんけどな。

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家族で異世界転移してんけど、儂だけがそのまんまやってん。 あきのななぐさ @akinonanagusa

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