第7話
『おやおや、やっと二人目の死亡者が出ましたか!私はずっと待っていたのですよ。一回目でとっとと死ぬべきだったものが無駄に生きているのですから。本当に長かったですね。』
最初の時と同じような恐怖が、電流のように体内を駆け巡る。本能がこの声と関わることを拒否しているような感覚に襲われるが、もう逃げられない。実際に、みのりさんも、洸さんも実際に僕の目の前で死んでいった。
君も同じ感覚に襲われているのか、綺麗な茶色の瞳が小さく揺れている。いつも、どんな敵であっても一切怯えなかった君が。やはり、僕たちが目の前にしている敵は異常な精神と素早く動ける行動力を持っているようだ。
ここまで素早く行動できるのは相当大きい組織が裏にいないと出来ないことだ。
『皆さん何を呆然としているのですか?早く次の部屋に移動してください。まあ質問したいことがあるというのなら一つだけお答え致しますがね。』
みのりさんが亡くなってから僕は一つ疑問に思っていたことがある。答えは出ていると言われたら否定できないのだが、それはあいつらの言葉を鵜呑みにした場合に言えることだ。現実にそんなことがあるわけがない。ここでうだうだと考えていても他の人が何か下らぬ質問をしてしまうかもしれない。急いで口を開く。
「…警察はこのことを把握していないのか?いくら別次元に飛ばされているというのが本当であっても、十何人と行方不明になっていたら流石に警察も探すだろう。それなのに外からは一切サイレンの音もしない。ここは本当に楽丘町なのか?」
物理的には質問の量は2つだが、答えるとなると一つだけでは説明がつかない。そう判断してここが本当に楽丘町なのかも聞けるはずだ。僕の予想が正しければ。
『警察なんて私達からしたら虫けらの様な組織ですよ。簡単に捜査させぬようにするのも簡単です。そして君はこの質問をすることで、警察がこの事を把握して、捜査しているのかと、ここが本当に自分の住んでいる町なのか確認しようとしましたね?私にはそんな手段使えませんよ。何故なら、知ろうと思えばここにいる皆さんの考えている事が全て分かるのですから。なんならさっき死んだ者のように皆さんの体を操ることも容易いのですよ?その事を忘れないでくださいね。』
考えていることがバレているようだが、いくつか聞き出せた情報がある。
まず、裏で動いているのは警察よりも大きな組織だという事。警察全体をも動かせるような言い方だったから警察のトップに忍び込んでいるものが居るという事だ。そのレベルだと警察だけではなく、世界を動かすほどの組織でも違和感はない。だが、なぜ僕らがこれに選ばれたのか。それが謎だ。
それと、「洸さんのように体を操ることも容易い」という事だ。これは最初の方で失敗した数人見せびらかしのために殺そうとしたのと同じ感じで、簡単に言うと「お前らの体は自分たち次第でどうにでもできるぞ」という脅しなのだ。
だが奴らの考えだと、体を操るのは今回だけだろう。何故なら、奴らは僕らが同じ人間を自分の命のために蹴落としあうという行為を眺めたいからだ。
今までのは、見せびらかしと言っても過言ではない。2人も目の前で死ねば流石に自分の命を守るために他人を蹴落とすと考えたのだろう。だが、2人死んだだけでも自分の命のために人を蹴落とすようなことはしないと考えて、次も蹴落としあいという形ではなく、誰かが死ぬのだろう。奴らの推理は間違っていない。むしろ正解だ。「自分の命のために」という名目で人を殺させて、それを見て楽しむ野蛮な奴らなのだろう。そうでなければ、こんなこと正常な精神であれば出来るはずがない。
『さてさて、次のお部屋はお花見をイメージしたお部屋となっています。そのお部屋では皆さんにまったりと過ごしていただきます。特にしていただくことなどはないですが、やはりお花見と言えば場所取りが大事ですよね。という訳で、今回はしっかりと場所を選んで頂いて、それからまったりと雑談でもしてお過ごしください。ちなみにお部屋の方は、壁一面が画面になっていて、そこに桜が映っているものとなっています。実際の外ではないので、くれぐれも壁に突っ込んでいかぬように…それでは移動を始めてください。移動しない方がいらっしゃればその方は速攻で死にますのでご注意と…』
楽しんでいるかのような声でそう告げ、静かに声は消えていった。花見イメージの部屋というのが意味わからないが、また声に従うしかないので、僕らは移動を始めた。
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