第2話

「移動しないと死ぬってどう言う事だよ?!」

「まだ死にたくない…!やだよお母さん助けて!!」

「あぁ神よ…!私は如何なる事もこの身を持って受けます!ですからどうかここにいる皆さまをお助け下さい!あぁ我らが神よ!」


さっきまで壁を叩いては叫んでいた大男も死ぬのが怖いのかキレ出し、ずっと泣き喚いて居た背丈の小さな男の子も顔を真っ青にし母に助けを求めるが、この場に母は居ないらしく誰も反応しない。神に助けを求めている女も、この身を持って受けるとかふざけた事を喚く。


そんな混沌とした状況の中、君はただ冷静に、奥の部屋をじっと見つめて居た。


ゴゴゴ…と言う鈍い音と共に両側の壁がジワジワと動き始める。


この部屋から出ないと死ぬ、と言うのは両側の壁が地道に迫ってきて、最終的には壁同士に押し潰されてペチャンコになり死ぬ、と言うことの様だ。


「なあ直太、とりあえずここから移動しないか?このままここで呆然としてると壁に押し潰されて死んじまう…」


表面的には冷静を装っているが、いくら強い君でも、怖いのか少し声が震えている。


「そうだね澪。皆さんも僕達と一緒に移動しませんか?ここでじっと止まって居ても、さっきの謎の声が言って居た通り死んでしまいます。」

「見も知らぬ奴に付いていけるか!お前らあっちの仲間だろ!こいつなんて俺は信じねえぞ!」


さっきまで壁を叩いて居た大男が叫ぶ。この様な男は大体何より先に人を疑う。自分しか信じない主義の人間だ。


「おいら…このお兄ちゃんに付いてく…!」


ここでさっきまで泣き叫んでいた男の子が予想外の反応を見せる。


「確かにここから動かなければ死んでしまいます!皆さま助かる為にこの子達に付いて行きましょう!そこで如何なる事があっても私が居るからには危険な目には合わせません!さあ行きましょう!」


神に頼ろうとしていた女が謎の演説を始めた。だがこれが良い結果になったのか、皆立ち上がり始める。皆が立ち上がり始めた頃君はゆっくりと隣の部屋へと足を踏み入れて居た。


君が部屋に入り、辺りを見渡すと腕を大きく使い丸を作った。安全という意味だろう。これに頷いた僕は通路で止まっている皆に向かいさっきの女を真似た演説の様なものを始めてみる。


「皆さん、部屋の中は安全な様です。ですが、何があるか分からないので慎重な行動をお願いします。」


少しざわつきが起きるが、さっきまで泣き喚いて居た男の子が恐る恐る部屋に足を踏み入れ、部屋の中をじーっと見て回る。


少しずつだが部屋に人が入ってきて、若干部屋が狭く見えた。最後に大声で俺は信じないと叫んでいた男が入ってくる。僕はここで嫌味を言ってみたかったが、状況が悪化しそうなので辞めておく。


『おやおや、全員移動しましたね。一人は死ぬと思って居たのですがね。まあそれは良いとして、こちらの部屋は、ご覧の通りクリスマスをイメージした部屋となって居ます。結構クリスマスツリーの飾り等、凝ってみたんです』


『と、それは置いておきまして、まずここで、一人目の死者が出ます。中央にあるケーキをご覧下さい。これは食べる事の出来るケーキです。皆さまにこれを一つづつ食べて頂きます。その内の一つに毒入りのケーキがあります。皆さまにはその毒入りのケーキを選ばない様にして頂きます。』


『特に必ずしなければいけない事はありませんが、ケーキを食べない、という選択は死を意味します。これだけは頭の隅に入れておいてください。特に時間制限などはありませんが、1日以上誰もケーキを口にしなければ、皆さまここでgame overとなります。それではごゆっくりと…』


一人死ぬと思って居た、という発言がどうも気になる。

最近、デスゲームというものが流行っている様だが、これがそのデスゲームとしか思えない。

デスゲームでは、必ず最初に一人死ぬ。命令に聞かないと死ぬという見せつけの為に。


僕の予想だと、その見せつけをしたかったのであろうあちら側の予想とは逆に全員無事に来てしまった。という事なのかもしれない。


取り敢えず、ここに居る人がどの様な人なのか把握しなければならない。その為には自己紹介が必要になる。食べ始めるまでの時間は問わないと言うような事を言って居たから、自己紹介にそんな時間はかからないだろうし、まずは自己紹介をする事から始めるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る