第5話

バレンタインと言えばチョコ。君からの義理チョコしか貰ったことのない僕にとっては無縁の行事だが、ここで僕は君以外からもらうチョコで死ぬかもしれないのか。そう考えると複雑だ。


『皆さん、移動が終わったようですね。ではこの部屋での説明をさせて頂きます。先程の部屋はクリスマスをイメージした部屋でしたよね。クリスマスと言えば、プレゼントの方がメインですが、あの部屋の場合少し視点を変えてケーキに毒を仕込んでみました。そして今回は、バレンタインイメージ。私は考えたのです。誰がバレンタインはチョコを渡さねばならないと決めたのかと。そして私は一つの答えにたどり着きました。それが、今回の死に方です。ちょっと先が気になっているようですね。ですが今はまだ全てのルールは発表しませんよ。取り合えず、ゲーム開始前に皆さんにはこのお部屋を探索していただきます。まあ色々あると思うので、皆さんにはその色々を探してもらおうという訳です。それでは頑張ってくださーい。」


何故か最後投げやりになっていたが、とにかく、何回も連呼していた「色々」が怪しい。何があるか分からないから一応このメンバーの中で一番信頼している君と行動するのが一番いいかもしれない。

君も、僕と一緒に行動するつもりだったのか、僕がそばに寄っていくと少し安心したような表情をして。


「よう直太。今日も元気か?」

「こんにちは澪。今日も元気だよ。」


お互いを確かめ合うかのように、いつものあいさつをする。そして僕らは目を合わせ微笑む。こうするとお互い落ち着く。それからあまり離れすぎないように気を付けながら出来るだけ別の所を探索する。お互い何を持っているか把握できるうえに効率的な調べ方だ。


「澪、こっちはタイマーみたいなのと大きめな袋に入ったチョコみたいなのをゲットした。そっちは?」

「こっちはよく見かける典型的なデスソースを見つけた。それとシリコンの何かの型を見つけた。これってチョコを作れってことか?」


確かに、君の言う通りチョコに、何かしらの型っていうのは、チョコを溶かして型に流し込むという事しか想像できない。それにタイマーは固まらせる時間を図るものなのかも知れない。ただ、デスソースが分からない。

チョコの中にデスソースを入れるという事なのか。それとも別の使い道があるという事なのか。


『ここで持ち物の中に使い道が分からない物がある方に朗報です。なんと、その使い道が分からない物を他の人と交換が出来ます。誰の何が誰に渡ったのかは分からない様に、私共の方でシャッフルさせて頂きます。持ち物が戻ってくる等の事はないのでご安心ください。この部屋では作れない物や使えない物は、そちらにいる者にお渡し頂ければ、作ってきたり使ってきたりします。正しい使い方や作り方をして参りますのでご安心下さい。』


これはチョコレートを作ってきてもらえるという事なのか。試しにチョコレートと型とタイマーを渡してみたら、ゆっくりと受け取ったものを確認し、そっとどこかに消えた。そして交換専用と書かれたプレートを首から下げた者に、デスソースを渡すと、またじっくりとデスソースを眺め、別の者に渡し、次に交換を希望している人を待っている様子。


僕も前は澪が助けに来てくれるまで、首にプレートを掛けられて、そこに「僕はゴミです。僕は生きる価値のない人間です。」等と書かれたものを強制的に首からかけられていた。澪が毎回助けに来てくれていたけど、毎度毎度懲りずに首にプレートを掛けてきたやつらが居た。今となってはもう懐かしい思い出だ。


渡している間にチョコが出来上がったのか、さっきチョコを渡した者がいつの間にか背後に立っている。よく見ると、よく洋服屋においてあるマネキンを改造した物のようだ。

マネキンの手の上にはしっかりと固まったチョコレートがある。マネキンの腕には、ハートがたくさん描かれた紙袋がある。


チョコレートのそばには紙が置いてある。その紙には「袋の中に箱が入っています。各自で梱包してください。中に何を入れるかは自由です。」


中身を爆弾などにすり替えることもできるという事なのか。そう考えると非常に危ない。

いったん君にチョコレートと梱包を渡し、僕は別の何かを探した。全員ざわつきながらも必死に何かを探している。僕もそれに紛れ人の探していなさそうな場所を探した。

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