主人公は「おっさん」。仕事をして帰る、しがないビジネスパーソン。
そんな彼が変なポスターを見かけた。
「サークル『異世界召喚予備軍』、メンバー募集中!」。なに、それ?――
紹介文(あらすじ)を読むと、ぱっとしない感じの主人公だったので物語に面白みがあるのか気になっていました。ところが読み始めると、あっという間に引きこまれました。
サークルのメンバーはおっさんばかりですが、個性豊かなメンバーが活動を楽しんでいる様子に、こちらも楽しくなってきます。それだけではなく、精神的に成長していくシーンもあり、応援したくなる熱い場面もありました。
身近にありそうなサークルの話ですが、「異世界召喚」というキーワードが良くて、最後まで楽しめました。
平凡な会社員であり夫、父親である主人公が、公民館の一風変わったサークルに参加することで、自分の「平凡」を塗り替えていくお話です。異世界とありますが、能力とかチートとかはナシ!本当に自分の力だけで自分を変えていく、勇気をもらえる物語。
正直言って40歳が「おっさん」というのが許せるかどうかはおいておくとして(女性なら「おばさん」…いやいや、まだまだそんなことないと言い張りたい!笑)、年齢に関係なく、自分の中の「異世界への扉」はいつだってそこにある。主人公は、ひょんなことから知り合った高校生の男の子とともに、年甲斐もなく本気でサークル活動に打ち込む中でそんなことを学びますが…その学びをまったく自分のこととして読んでいることに驚きます。
読み終わってからあらためてタイトル「異世界召喚予備軍」を見ると、ああ、自分のことかって笑みがこぼれますよ!!
異世界転生、異世界転移。
SF業界では1900年代前半からあったこの題材が、近年、形を大きく変えて日本の文化となったのはいうまでもない。
ましてやここ数年「転生したらスライム」などは数年前のエンターテイメント全体の売上高でワンピースなどを抜き、トップになるほど、今は異世界転生物が主流になりつつある。
だがあまりにもありすぎて何から手を付けたらいいか。また異世界転生の流れに乗れない、少年少女が主人公というのもわからない。
そういった意見がある人に、本作はおすすめです。
主人公は中年のおじさん。舞台は公民館。異世界転生したらどうする、というテーマでサークル活動を始める。
ここで異世界転生について色々と説明があるのは、非常に親切です。
本作は入門小説、異世界物の取扱説明書とも言える、素晴らしい小説だと思います。
いろんな方に読んでいただきたい。
酒もタバコもギャンブルもやらず、かといってこれといった趣味や特技もない。どこにでもいる平凡なサラリーマン・寺崎正(40)。
妻や娘からも「つまらない人ね」と言われて傷つく小心者の彼が、奇妙なサークルに入会したことで人生に彩りが生まれる。
毎週木曜日。公民館で行われる中高年サークル「異世界召喚予備軍」。
活動内容は、異世界に召喚されても生き残る技術を身につけること。
もちろん、異世界召喚なんて非現実的な空想だ。でも、もしかしたらと夢やロマンを抱くおっさんたちが集まってくる。
サークルメンバーは中小企業の社長から、有名メーカーの本部長、ベンチャー企業の幹部まで社会的地位のあるエリートばかり。
そんなおっさんたちが、異世界について真面目に議論したり、剣と盾を振り回してアーマードバトルしたり、サバイバルを想定して芋虫を食べてみたり、童心に戻って仲間と大騒ぎする光景が微笑ましくてワクワクするのだ。
寺崎もバトルで勝つために筋トレを始めると、仕事や家庭にもメリハリがついて上手くいくようになる。おっさんでも何かを始めれば、成長できる、変われるんだと勇気づけられる。
そんな寺崎が、いじめられっ子の男子高校生と出会い。芽生えていく世代を越えた男の友情がさらなる感動を呼ぶ。
いくつになっても男の中には少年の魂が眠っていると、心の奥を揺さぶってやまない。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
ミドル・クライシスは現代ドラマの金字塔にして、「外さない」題材の代名詞といえるだろう。人生の中年期に差し掛かった主人公が自らの半生を振り返り、喪ったもの、あるいは取りこぼしてしまったものを求める物語は誰の人生にも等しく訪れる物であり、リアリティ――それも幾分かの切迫感を伴うそれ――を多分に含む。この小説もまた、妻や娘から「つまらない人間」と断じられてしまった男の物語である。
しかしながらこの物語は決して陳腐でも、ありきたりでもない。
「異世界転生」という具材を用いた新奇さ以上に、「あくまで善意と好意から主人公をつまらないという家族」や、「決して主人公の人生や職業に踏入らない仲間」そして物語の中心にあるのは、題材とは真逆の「苦しむ若者の心」である。
「中年の危機と異世界転生」という安易な切り口に見せかけながら、その実にある「いい大人の心意気」は、おもわず心が熱くなることうけあいだ。
完結作品である本作だが、是非にシリーズでサークルメンバーの日々を追いたくなってしまう。非常に良い小説でした。
寺崎正40歳。ごく普通のサラリーマンで、ギャンブルもやらないし酒も飲めない。かといって文学や映画、スポーツなどの分野に興味を示すわけでもない彼は、妻子公認の「つまらない人間」であった。
しかし、そんな寺崎にも転機が訪れる。
公民館の掲示板に貼られていた一枚のポスター。それはまさしく、ちょうど寺崎と同年代のおっさんたちが集うサークル「異世界召喚予備軍」のメンバー募集の張り紙だったのだ……というところからスタートする現代劇です。
異世界召喚予備軍を名乗るだけあって、おっさんたちの活動は本格的。
甲冑をつけてチャンバラをやるあたりは「ああ、要はアーマードバトルかな? 珍しい題材だな~」と思って読んでいたのですが、しばらくしたら異世界で生き延びるためのサバイバル講座が始まって「あっ、これガチなやつだ……!」と認識をあ改めるなど。
冴えない男だった主人公に打ち込めるものができ、彼自身が変わっていく様子は心に響くものがあります。
流行りの「異世界召喚」を逆手にとった小説です。主人公はごく普通の冴えないおっさん。とくに趣味もなく張り合いのない毎日を送っていた彼が、異世界召喚を真剣に考えるサークル「異世界召喚予備軍」に入り、生き甲斐を見いだしていくヒューマンドラマが展開していきます。
それにしても、主人公をはじめ出てくるおっさんたちが本当におっさん。口癖やセリフ回しが実際にいそうですし、それでいて「ドラマだったら、俳優はあの人だよな~」と想像がふくらむほどキャラとして魅力的です。
話運びも安定していて、何より無駄のない文章でかなり読ませてきます。文句なくおもしろい。
ここからはレビューというより個人の感想ですが、唯一の高校生、加護野くんがみんなに絵をみせるシーンは胸が熱くなりました。感動です。
本当に、続きが気になる作品です。
どうもありがとうございました。