おわりの彼の話
――彼女は、変わっていなかった。
寄る年波に姿が変わっていても、その目に宿った光は変わらなかった。
かつて、最後に目が合ったその一瞬。
そこにあったのは、何かを問いかけるような光だった。
今思えば、それは、
帰れないと答えた僕に、彼女はそう思ったということだ。
そして、それは今なお変わらず、老いた彼女の目に宿っていた。
もう、僕はどこにでもいる
その内、彼女の話を聞き留めた
彼女の名も、語り継がれる内に、数多いる
さまよえる魂でしかない僕は、いずれ彼女を呼んだ葬式の主役のように、いつかの終わりは約束されている身だ。
それでも、キリスト教という信仰の枠外に――民間での信仰ですらその先を見いだせていない状況で、彼女の祈りの存在は、救われないかもしれないという陽の差さない暗がりにも似た不安を照らす小さな蝋燭だ。
そう、彼女のような存在は希少だ。またむこう側に連れて行きたくなってしまう程度に。
それで、本当に救われるかどうかはともかく、この本来よりも長い生につきまとう不安を照らすだけなら十分だ。
同時に、彼女の心をこちらに縫い留めてしまった事に、人としての罪悪感と
それが本当に僕らのような
それでも、むこう側の隣人は此処にいて、折を見て戯れに干渉をしながら、確かに在るのだ。
Tá daoine maithe ann.――善き隣人は、其処に居る 板久咲絢芽 @itksk_ayame
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