信仰というには淡く

善き人々ディーネ・マハがあわれみを嫌うのは知ってはいるわ。

でも、善き人々ディーネ・マハも私たちにとっては、愛しい日々の情景の一部だわ――私自身がそういう目にあっても、でも、そうでしょう?

そういう人が、望む末に行き着くようにと、ほんのひとかけでも祈る事はあわれみなのかしら。


善き人々ディーネ・マハはいい事も悪い事もするけれど、それって、人間だって変わらないじゃない。

だからね、私、変わってると言われるかもしれないけれど、お祈りをする時には、そのひとかけでも善き人々ディーネ・マハのためになりますようにって、いつも思ってしまうの。


どうしても、どうしても離れないのよ、彼のことが。

もしかしたら、あの時から私の魂の一部は、妖精の馬フィールラールの背に揺られたままなのかもしれないわ。

うん、きっとそう。

きっと、私の魂の一部は、あのブルーベルの森から常若の国ティル・ナ・ノーグへ連れ去られて、そこでまだ当時のまま、遊んでいるのね。

だから、どうしても善き人々ディーネ・マハを悪くは言えないし、出過ぎたことだとは思うけれど、善き人々ディーネ・マハがいつか救われることを願ってしまうのだわ。


ふふ、そう、昔話よ。

私は語り部シャナヒなんてガラじゃないし、自分に起きたこれっきりのことしか知らないのだけど。


あら、どうしたのかしら。

私の話、そんなに……あら、もしかしてあなた――

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