第4話 やり直し

兄の初めての作品を読んだとき、静かにノートを閉じた。そしてそのノートを思い切り破いた。



内容は酷いものだった。私がその編集者や審査員でもこれじゃあ落としていると思った。


40手前の人間が夢もなくただただ惰性で生き、そして、最後は人を巻き込んで死んでしまう作品だった。完全なバットエンドだった。



「・・・・・・・・・ひどい作品。ほんとにひどい作品。もう少しまともな作品を描けないわけ」そんなことを思いながら私は、静かに兄の部屋で泣いていた。


窓から光る月明かりが私が破いたノートをくっきりと見せていた。



次の日、同窓会を終えた後、私は兄が眠っている墓にいった。


新しい花と水を変えた後、私はゆっくりと墓の前に破いたノートを土の中にいれた。



「くだらない話だったわよ」私は兄の墓の前で静かに言った。



季節が変わるように私も兄もいつかは変わっていかないといけないのかもしれない。だけど兄は変わることが出来なかった。時間に追われ、したいことがわかっているのに夢が叶わない人間と叶う人間、なりたいものがわからないまま時間だけが過ぎ、年老いていく人間。仕事だけに追われ、年老いていく人間。すべて共通しているのは時間だけ、季節は常に過ぎていくこと。



人は年を取るごとに変わっていかないといけない。成長しないといけない。兄が生きていたら小説の中の人物と同じようになると思ったのだろうか?小説家になれなかったらそうなるのかもしれないと思ったのだろうか?



私は絶対に否定する!兄は小説の中のような人間には絶対にならない!

「だから兄さん。書き直してまた私に提出して」







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・・・・・・・・・最後のドア zero @kaedezero

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