おじさん。
「先生、弟さんいらっしゃったのね。しかも正体は"幸せをくれるおじさん"…!」
私のその言葉に、先生は再び少し困った表情を浮かべる。
「その……"おじさん"っていうのがどうもね……。僕も弟も双子だから26歳なんだけど、そうだなぁ……。噂でそういう風に広まっちゃってるみたいだけど、"おじさん"はまだ早い気がするけどなぁ…はは。」
「あっ…ごめんなさい。先生は意外と気にするタイプなんですのね。」
「でも良かったです…。だって私をいつも診てくださる先生の兄弟だから、安心して任せられるわ!」
安堵の表情を浮かべる親友を横目に、そっと瞼を閉じる。
"やっと幸せになれるんだ"という実感が少しづつ湧いてくるのを感じながら、親友と先生の会話を静かに聞いていた。
しばらくすると馬車が停止し、扉が開いた。
「到着でございます〜!」
従者と思しき男がひょこっと顔を覗かせる。
先生に続いて、親友と私も馬車を降りる。
すると、目の前には見たことも無いようなとても立派な屋敷があった。
「ここは……?」
親友が戸惑いを隠せずにいると、先生はフッと笑い、優しく答えた。
「ここは私の生家で、ここに私も弟も住んでいるんだよ。」
「えっ!?ここ先生のご自宅なの!?」
驚きのあまり、二人して目を丸める。
それもそのはず、目の前には私達を圧倒するには十分すぎるほどのとても立派な屋敷が広がっているのだから。
「さぁ、遠慮は要らないよ。入りなさい。」
玄関前に立っていたメイドが家の大きな扉を開ける。
目の前に広がる光景に、私たちは更に圧倒された。
「「「お帰りなさいませ、旦那様。」」」
扉のその先には絨毯に沿って並び頭を下げる大勢のメイドが居た。
「お客人も一緒だ。丁重にもてなすように。」
それだけ言うと、再び先生は私達に付いてくるように指示する。
雰囲気に圧倒され親友の手を握ると、親友も同じ気持ちだったようで、固くその手を握り返してきた。
先生の後に続き階段を上がり、更に廊下の奥へと進んで行く。
廊下には、人の腕や脚を
一番奥の部屋の前で足が止まる。三度のノックの後、先生が言葉を扉の奥へと投げかける。
「私だ。この間紹介した子を連れてきた。」
「はいはーい、ちょっと待ってね!」
少しの間の後、扉の向こうから一人の男の姿が見えた。
「どうぞどうぞ、よく来てくれたね!」
「あっ……先生の弟さんですね?私、先生にいつも病院でお世話になっております。今日からよろしくお願いいたしますわ!」
彼女が一目でその男を先生の弟と見抜いたのも無理ない。
男は髪がサラサラであるものの、顔の中身が先生そっくりだからだ。
「そっかそっか!よろしくね!そこのソファに腰掛けてくれるかな?楽にしていいからね!」
「では僕は少し席を外させてもらうね。ごゆっくり。」
親友と広いソファに腰をかけると、先生がそう言い残し部屋を出るのが見えた。
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