オメカシ。

「……さて。」


 男が私達の目の前のソファへと腰を下ろす。


「ここには君たちの欲しいものは何でもある。無ければ揃えてあげることだってできるよ!」


 私はすかさず口を開く。


「私達、二人で幸せになれるのね!」

「勿論だよ!二人の事については兄から聞いてるよ。今まで辛かったね。」

「はい…。でも今日から幸せが手に入るんだもの!今までの辛かったことなんてすぐに忘れてしまいますわ!」

「ふふ…そうかそうか!それじゃあまず、そのボロボロの服を着替えようか。ほら、ここにはこんなに綺麗なドレスだってあるんだよ!」

「え…でも、これ…私たちのお気に入りで……。」

「大丈夫!ここには何だってあるんだから、服だって汚れたら着替えてしまえばいいのさ!」

「そう…ですわよね。とっても綺麗なドレス…本当に着替えていいんでしょうか…?」


 俯き気味にそう答えると、男は先生と同じ笑みを浮かべた。


「ははッ!当たり前じゃないか!君たちのために用意させたんだよ。僕は先に食堂で待っているからね。」


 男はひとしきり喋り終えると、ソファから立ち上がり颯爽とその場を後にした。

 男と入れ替えに女の従者が二人部屋に入り、私たちの身支度を始めた。


「…私こんな綺麗なドレス初めて見たわ。」

「本当。まるでお姫様みたい。」

「ふふっ、これからは毎日こんなに綺麗な服が着られるのよ!」


 まるで二人の身体に合わせて作られたようにピッタリのそのドレスを身に纏うと、二人はゆっくりと食堂へと歩を進めた。

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