お食事。

 扉の先には見たこともないような空間が広がっていた。

 長く大きなテーブルの上に、ピカピカの食器に盛られたたくさんの豪勢な料理が並んでいる。


「二人ともよく似合ってるよ。さぁ、そこに腰を下ろして。楽にして。」


 私たちが周りの光景に呆気に取られていると、男がふっと笑みを浮かべながらおいでおいでと手招きする。


 私と彼女が案内された席に座ると、近くに見覚えのある顔があった。


「やぁ、二人とも見違えたよ!凄く似合ってるじゃないか。」

「先生!先生も一緒にお食事なさるのね。」

「少しだけね。」


 彼女と先生が会話していると、男が口を開く。


「さぁ二人とも、今日からここが君たちの家だ。気兼ねなく好きなようにたくさん食べなさい。」


 私たちは、無我夢中で目の前のご馳走を頬張った。

 私も彼女も、初めてお腹一杯という感覚を覚えることができたのだった。

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