先生。
二人にとっては一張羅のワンピースに、お揃いの髪留めに、左右対称にしたお揃いの髪型。
周りから見れば、私達は姉妹も同然だった。
二人で仲良く手を繋ぎ、街外れの方向へとゆっくりと足を進める。
「……あっ。」
「どうしたの?」
「あれが先生よ…!」
彼女が指差す方向へと目をやると、そこには一人の若い男性が建物へもたれかかかっている。
「あの人が、私の病院のいつも診てくださっている先生。"幸せをくれるおじさん"に会わせてくれるって言った……。」
親友の主治医だという先生は、視線を感じたのか私たちの方へと目をやると、すぐに微笑み歩み寄ってきた。
少しクネクネと癖がついた髪が印象的だが、いかにも人の良さような人という印象を得た。
「やぁ。体調はどうだい?」
「有り難うございます。今は大丈夫ですわ。」
「そうかい、それは良かったよ。……こちらの方は?」
「私の親友です。先生にも話したでしょ?この子も一緒に幸せにしてもらうの!」
親友が私を紹介した後、彼女の主治医が私へ視線を移す。
私が会釈すると、先生は私の眼を見て優しく微笑んだ。
「そうかそうか……こんばんは。場所へは私が案内させてもらうよ。」
「あっあの、よろしくお願いしますわ!」
「緊張しなくても大丈夫。とても良い人だからね。」
私達の緊張が伝わったのか、先生はフフッと笑う。
力の入っていないような、ヘラっとした笑いに私の肩の力が弱まる。
「じゃあ……行こうか。」
先生のその言葉の直後、目の前に一台の馬車が止まった。
いかにも高級そうな乗り物の扉が、私達の目の前で扉を開ける。
キョトンとしていると、先生がその馬車へと乗り込み、私達に向かって手招いた。
「えっ……これ、私達なんかが乗って良いのかしら……。」
「こんなの初めて乗るわ……。」
困惑しながらも馬車へと乗り込むと、程なくして扉が閉まり、馬の鳴き声と共に馬車がゆっくりと動き始める。
「あの……こんな馬車乗れるお金なんて持ってないわ……。」
私と親友の向かいの席へと座っている先生が、私のそのセリフにフッと笑いを零す。
「ふふっ……!大丈夫だよ、これはただの送迎だから。向こうのご厚意というやつだよ。」
「あっ、それは良かったですわ……。それより、私も彼女も"幸せを売るおじさん"がどういう人なのか知りたいですわ。先生はどんな人なのかご存知なんでしょう?」
私の問いに対し、先生は少し困った表情をしながら頭をポリポリと掻く。
「うぅん……そうだね……。」
少しの間の後、先生はゆっくりと口を開いた。
「それ、僕の双子の弟なんだ。」
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