おめかし。

 親友の綺麗な瑠璃色の髪を左に垂れるようにゆるく結った後、私の髪を右に垂れるように、同じように自らゆるく結う。髪留めを付け、鏡越しに私を静かに見つめている親友へと目線を送る。


「私達、まるで姉妹のようね。」


 クスクスと笑みを零しながら、親友は私の髪を優しく撫でる。


「この髪留め、とても綺麗な色ね。」

「あなたの綺麗な黒髪にとても合うわ。それにこの色、あなたの翡翠色の目の色と同じ!」

「私の目、こんな綺麗な色?」

「ええ、とても!」


 鏡の中の嬉しそうな表情をした親友と眼が合い、再びクスクスと笑みを零し合う。


「私達、幸せになれるかしら……。」


 親友のそのふとした一言に、私はフッと微笑みながら、頭を撫でる彼女の手の上に、そっと自分の手を乗せた。


「なれるわよ!だってこれからは食べ物に困ることもなければ、寒さに困ることもないのよ!」

「…ふふ、あなたのそんな嬉しそうな顏初めて見たわ。」

「"幸せをくれるおじさん"……私てっきり噂話でしか存在しない人だと思っていたわ。どんな人なのかしらね……?」

「実際に会ってみないとどんな風貌をしているかは分からないわ。でも、私が病院で先生に紹介してもらったんだもの。お話は本当だと思うから、安心してね。」

「大丈夫。あなたの事は信頼してるわ!ただ私、緊張してきちゃって……。」

「あら……私も実は今、胸が張り裂けそうにドキドキしてるわ。」

「手が少し震えてるわね……二人でいれば、きっと大丈夫よ。一緒に幸せになりましょう!」

「そうね……私達、一人じゃないものね。」



 今日、私と親友は遂に幸せを手に入れる。


 時は刻々と迫っていた。

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