心で降る雨と次々に変わる信号の色

目を閉じた瞬間に次の色に変わる信号に少しだけ生きている息を感じたことがあった。

随分昔の話。

溢れた糸の上に、足跡を見つけたと思ったらそれは染みでしかなかったみたいに。

「あの頃はいつも笑ってたんだよね」

そう話す内に皺の数はみるみる増えていくからさ。

もう話す事をやめたいと思ったんだけど、そういう訳にもいかないみたいで。

「……でも、あの人はもういないから」

寂しげに吐き出す言葉の中には、雨が降っていた。

もし僕がそんな君の雨の中に入っていけたら、きっと安いビニール傘くらい差せるのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1分以内に読める超短編集 古びた町の本屋さん @yuhamakawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ