まるでその世界にいるかのような

 読んでまず思ったのは、なんて美しいのだろう、でした。そのくらい、というよりそれに尽きると思います。ただただ、表現が素晴らしい。
 ‘私’が口にする金平糖の甘さや移り変わる空の色、落ち葉の音。‘私’の感覚に触れてくるものの表現にうっとりしましたし、こんな表現ができるのか、とも思いました。物語の展開ではなく、表現で楽しめる作品は久しぶりです。これぞ文学というべきなのでしょうか。
 ともかく、表現が作り出す空気の味わい深さを楽しめる作品です。