第12話

 次の朝、藤本はいきなり起き上がり、着替えると、外へ出て行こうとした。


「あなた、どこへ行くの。お茶が入ってるわよ」


「ちょっと駅まで行って来る」

 

 藤本はそう言い残して、急ぎ足で駅へ向かった。

 通勤時間帯とあって藤本の前後を、サラリーマンが無言で歩いている。藤本は、サンダル履きであったが、無意識のうちに彼らと歩調を合わせていた。



 藤本は駅に着くと、売店で数冊の求人誌を買い求めた。

 そして来た道を下を向いて歩き出した。時折、急ぎ足のサラリーマンと肩がぶつかった。


 藤本の胸をかつて味わったことのない激しい焦燥感が襲った。



                  完

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ヘッドハンティング 阿部亮平 @naomi8731

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