女性上司にフラれた会社員・篠田(男性)は、恋愛相談に乗ってくれた先輩・五十嵐(男性)に思いを告げられる。
女性だけが恋愛対象だったはずの篠田の世界が、この時から大きく角度を変えて急速に回り出す――
何といっても、篠田のうろたえっぷり・悩みっぷりが初々しくて面白いです。
と同時に、なかなか自分の素直な感情に気づけない・なかなかくっつかないもどかしさにじれじれさせられたり。
読者をドキドキハラハラに引き込む構成が、いつもながらお見事!
男性同士の恋愛の行方ももちろんですが。
この恋愛や周囲の人たちとの関わりを通して、まだまだ幼さが抜けなかった篠田が人間的に大きく成長していくのがみどころのひとつ。
ラストは、あの篠田くんが立派になって……と、深い感慨に浸ること間違いなしです。
ハッピーでコミカルな、イケメン先輩×カワイイ後輩のドタバタ恋愛、ぜひともゆっくり楽しんでいってくださいね。
作者の別作品、『属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?』のスピンオフとのことですが、恋愛対象が違うアナザーストーリーになっているところが、また面白いです。
両方読めば、味わいもさらに深くなることでしょう♬
容姿端麗、頭脳明晰、誰もが憧れるようなイケメン王子様に想いを寄せられてしまった「普通の男の子」。ひとり悶々と悩んだり、周囲に励まされたりしながら彼は自分の本当の気持ちに気付いていきますが──。
自分が引けば相手にも引かれ、向き合おうとすると正面から頭をぶつけ合ってしまう。お互いの気持ちを思えば思うほどになぜか空回りしてしまう。そんなじれったい心模様がとても丁寧に、そしてコミカルに描かれています。
堂々巡りする純情赤ずきんの思考や、クールに見えるイケメン狼の内面の逡巡。
人の持つもどかしい心のうちを、掬い取るような言葉で見せてくれます。脇役たちが要所要所にポイントを押さえた活躍をしてくれるのも物語を盛り上げます。
一番大切なことは、手を繋いだその先にあるもの。主人公が辿り着いた結論に、きっと読者も頷き、幸せを願うはずです。
BLというジャンルに抵抗を覚える方は、まずこちらを読んでみてはいかがでしょうか。人を想うことに線引きなど必要ないと気づかせてくれるかも知れません。
コタツに入った二人にあたたかい未来が待っていますように。
「むかしむかし、あるところに、それはそれは可愛い女の子、居りました」は、グリムやペローの童話の世界。
作者様の筆の魔術にかかれば、
「現代社会、あるところに、それはそれは可愛い男の子、居りました」に変わるのです。
篠田 航平くん、24歳。失恋の痛手を癒やす恋の始まりの温度は、決して高いものでは、ありませんでした。最初から沸点の高い恋愛が素晴らしいというわけではないのです。
乗り気では、なかった。そんな恋愛でも、想われる気持ちに、どれだけ応えていけるか。
性別を超えて、居心地の良い場所をじれったくも探して、歩み寄る恋愛の純粋さに、陽だまりのような、あたたかさをきっとおぼえる。
無垢な想いの在り方を確かめさせてくれる物語です。
女性上司に振られてしまった主人公男子が、超絶イケメン男性上司にロックオンされる物語。一言で言うとこのような感じですが、ジェンダーを超越しようとする主人公の葛藤が、とても丁寧に繊細に描かれています。
本人の気持ちを後押しするような、周りの登場人物たちも良い。
主人公の妹やランチ友達(?)の部長など、ここぞというところでいい働きを見せながら、次第に自分の気持ちに気づき、主人公とイケメン狼は近づいて行きますが、もちろん一筋縄ではいきません。
職場的な地位と名誉、世間の目、それから主人公たちを惑わせる魅力的な異性からのアプローチ。
果たして、二人の関係の行く末やいかに? ぜひ、皆さまの目でお確かめください!
文体は柔らかく丁寧で、テンポも良いので、まったくストレスなく読み進めることができます。
そして、作者さまからのメッセージをキャッチしてください!
前作である『属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?』を拝読し、拙いながらも「ワンコから騎士への成長物語ですぜ!」などとレビューを書かせていただきました。スピンオフとなれば、騎士となった篠田航平くんがいよいよオトナの世界で大活躍! と思いきや、タイトルに 「えっ? ちょっと待って」となり、よくよく噛みしめ解釈してみれば「俺をイケメン狼が狙っている」……はあっ? これってもしやまさか、と拝読いたしました。ピンポン、でした。アオイさまの十八番、BLだったのです。BLは苦手なのですが、なんといっても作者はアオイさま。これは拝読する価値はある! と直感がひらめき、ラストシーンで拍手喝采する自身を想像して読み進めました。はい、もう間違いなく面白い(あっ、コメディではありません、念のため)一品です。篠田くんと五十嵐先輩の関係は果たしてどうなるのか。こうご期待! と講釈師のようにあおってしまう素敵なラブ・ストーリーです。できれば前作からご覧いただくと、よりキャラクターが活きてくるかと思います。
スピンオフというよりも、原作とは別の世界という観点から読ませていただきました。
個人的にBL物には「エグ味」を感じる事が多く、はっきり言って好きではない(差別発言)のですが、今作はどうかと言うと、「とってもエグくてあざとい!」なと(笑)。原作の主人公の可愛らしさから打って変わったディープかつどろどろな世界感をこれでもかと満喫致しました。確かに純愛なのですが、その分生々しいのです。
しかし読み終えてなぜかスカッとスッキリしてしまうという、よくわからない境地に達しております。なんだか無理矢理自分の心のどこかが開拓されてしまった感じ。間違いなく変態な作者に強烈に影響された感じ。距離感が掴めないうちにいつのまにか「やられてしまった」そんな感じです。私が初心なだけかも知れませんが、強引に襲われてしまったような(注:今作には強引な描写はありません。あくまでソフトにじわじわと、です)。
というわけで、一線を越えてみたい願望をお持ちの方には間違いなくお勧めです。もちろん責任は取りません(笑)。