どうでもいいことばっかり言う孝代さん。そんな彼女に呆れるのもほんの一瞬だけ。好きな人と他愛もない話をしながらただご飯を食べる。そんなラブコメ。
僕が一番好きな話は手作りのプリンの回。風邪の孝代さんのためにプリンを手作りするんですけど、ネットを見ても出てくるのは手間暇のかかるレシピばっか。料理ができない主人公は妥協案でプリンの素でプリンを作る。でもその味は、どんなレストランで出されるプリンよりも美味しい。そりゃそうだよな、どれだけ不器用でも自分のために作ってくれたんだもんな。
どうでもいいことを話せる相手、好きな人と食べる料理。それだけでいい。ほんわかして心が温かくなる。
好きな人と一緒に笑いながら食べるものは、たとえどんな料理でも美味しいよ。
本作は短編集だが、いずれも"食"に関する話題が登場する。
アイスクリームに始まり、ラーメンにフカヒレにプリンetc...
どれも美味しそうなものばかりで、読んでいると思わず食欲がわいてくる。
単に料理に関する知識を並べ立てるわけではなく、その料理ができる経緯であったり、味わう環境(場所)であったり、あるいは料理に向き合う心情であったり、様々な角度から丁寧かつ分かりやすい表現で記されており、食の知識に乏しい私でも楽しく読むことができた。
また、それらのグルメを味わう一風変わったカップルのやり取りはいずれも興味深く、また微笑ましい気持ちになる。
このカップルは、互いのことを深く詮索したり、必要以上に自分のことをあれこれ語ったりしない。
それでも、"食べ物"という共通の関心事、また"食事"という共通のシチュエーションを介して気持ちが通じ合っているというところが素晴らしく、ある種の理想的なカップル像かも知れないと感じた。
食事にまつわる"孝代さん"の様々な気付きやこだわりや考え方などは、一見すると独特で変わっているように思えるかも知れない。
孝代さんの提案には、でも実は私たちが日々生活をしていく中で誰もが直面するような問題や、誰しもが抱きうるような――しかし、見過ごしてしまいそうな――感情などが見え隠れしていると思う。
物事の"タイミング"、分かち合える人がいるからこそ整える見栄え、それ自体よりも、用意してくれた心遣いを喜ぶ気持ち、ありのままで満足せず、見捨てず、より良くしていこうという姿勢etc... 食を通じて、日ごろの自分の生活や考え方などを振り返ることで、新たな気付きがあるかも知れない。
長々書いてしまったが、単純にグルメ系のラブコメということで楽しめる作品なので、興味を持たれた方はぜひ読んで頂きたい。
セカイ系のようなな属性を持つ年上彼女と、食事と、それに至るプロセスが綴られている。
主人公目線でそれは書かれており、極普通の感性を持つ彼目線で書かれている。だから、我々読者にとって彼女は少し不思議な人物に見えるかもしれない。
だが、割と普通のことを言っているだけで、そこに特別なことはない。
第一話のアイスクリームも、我々一般人からしたら可笑しいが、だが彼女の言い分を聞くと「なるほど」「たしかにそうだ」と同意できる。
そういうところが、セカイ系っぽいのかもしれない。
だから、ただひたすらの日常を書いているだけ。
それでも、読んでいる最中は、薄暗いアンティークショップの中にあるカフェに居る感覚になる。
そういう意味で、雰囲気が良い。
めっちゃ好こ