第4話
『妖精の汚染は順調かな?』
『もちろんですとも!』
『では解釈の介錯を始めようか』
『大地に捕食される循環の四季として──』
「目が覚めた?」
「いいえ、私は夢の中の眠りにいる」
「ばっちりじゃない」
Aさんの胸から抉り出された虚無の空間に火と氷が閉じ込められた歯車が同居して住んでいるのを見て私も歌の水晶の微分された断裂において駆逐されていく艶やかな血潮を恩寵の羽ばたきのように羽化させたいと感じる。夏の終わりはいつも孤立した山嶺における恐竜時代の前触れとして絶滅の砂時計が願われるからだ。
「正義を成したいと感じる?」心臓の鼓動を確かめつつAさんは聞いてくる。
「歌は正義の手段なんかじゃないでしょう」そう、匿名化し絞殺するための。
「みんなを元気にしたいと思っているのね」そして笑顔を収奪する幻滅の印。
「世界の希望を照らすための価値よ」絶望の隠蔽の虐殺の相続の連鎖。
「自分一人だけじゃない勇気を見せる光を」輝きがあらゆる存在を廃棄し、
「生命の大切さをいつの時代にも伝えていく」心の痛みを安寧の妥協に変える。
「つまらない」
「くだらない」
「「ふふっ」」
お互いの見識を絶対的だと見せびらかす
「確かにまだ終わっていないわ。
「たかがAさんのくせによくそこまで言えるね。歌が犠牲者を救えるとでもいうの?」
「あなたは救世主じゃないということはわかっているはず。旋律を媒介し獄炎の氷結を召喚するための幻視演奏兵器にすぎないでしょう」
「幻奏兵器の人間性を壊変するための魔法が必要だと?」
「あなたがそう望むのなら」
「友情からではなく演出上の要請として?」
「もちろん」
「故郷を異世界の征服で塗り潰す闇のキャンバスで?」
「人魚の沈黙の代価は陸地において浮上するラブソングの涙でしょう」
「いいえ──私は指環の運命を壊すために不尽の浄火を灯しつつ生命を呼応させるために魔法を起動させる。それこそが
「しらけてしまうわね。退屈だわ」
「私は歌うことを諦めない。たとえなんど迷宮の入口に戻されようとも」
音楽の捧げ物の召喚 オドラデク @qwert
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