第2話

1995年3月 ナビエボ近郊の村


 「全員、家から出てこい!命令に従わない者は射殺する!」

村中を歩きながら拡声器で叫ぶフミリ人民兵の男、その男の周りにはAK-47を構えた若い民兵たちが付き添う。

 次第に家から一人ひとり村人が出てきた。皆怯えて震えている。

 広い草原に村人100人が横一列になる。その中にはまだ5歳のあどけなさの残る幼児もいた。


 「お前たちの中で、『生涯一度も首都ナビエボへ行ったことはない』と神に誓える者は・・・あの一番高い山の方を向け!」

 拡声器の男の言葉を聞いた村人が一斉に山の方へ正面を向く。

すると、男は周りの部下たちに手で合図をする。部下たちは村人の後ろへ移動する。

















ダダダダダッダダダダダダダダダダダダダッダダダダダダダダダダダダダダダ!





「ガソリンをかけろ!」

男の命令に黙々と従う若い部下たち、先程まで『立っていた村人』の身体にガソリンをかけていく。そして最後に火を放つ。


皮膚が溶け体液が滲み出ていく死体の列、それを背に向けながらフミリ人民兵たちは村を去っていった。


その男の名はセルゲイ・ゴルチェフ。フミリ人民兵組織『死神』の司令官で、22年後に国際裁判法廷で服毒自殺をする戦犯だ。



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水戦争 ~Water War~ 不良将校 @tiger3kai

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