従者型を考察する

・従者を使うにあたって


あらかじめ断っておくが、このコラムはただ強いビルドをしたい方に向けて書いたものではない。

そもそも強いビルドをしたければ、キュマイラやサラマンダーといった火力重視のシンドロームで高係数のエフェクトをしこたま積んでぶん殴ればいい。

彼らは初期作成であっても極めて高い攻撃力を発揮し、シナリオにて立ち塞がる敵をバッタバッタと薙ぎ倒してくれることだろう。

そうでなくてもダブルクロスは致命的に相性の悪いシンドロームの組み合わせはほぼ無いと言ってもいい。いかにも水と油なキュマイラとソラリスでさえ、意外と噛み合ったりする。



……などと長々と前置きを書き続けるのもアレなので、ひとまず解説に移ることにしよう。


・従者を扱うにあたって


もはや言うまでもないと思われるが、従者とはブラム=ストーカーのエフェクト《赤色の従者》ないしそれ関連のエフェクト群によって生み出されるPCの従順なる下僕である。

従者の詳細についてはルールブック2またはEAに書かれているので割愛するとして、まずは従者を扱うメリットを書いていくことにしよう。


「手数が増える」

キャラクターが2人になれば手数も2倍。手数が2倍になれば火力も2倍。理性を失ったジャームでも分かる話であろう。


「行動値を上げやすい」

各種エフェクトによって能力値を調整しやすく、《赤河の従僕》は全能力値が上がる。Lv5で取得すればそれだけで行動値24だ。


「従者の安らぎ」

エフェクト《愚者の兵装》で取得可能なアイテム。あろうことか従者のメジャーアクションの侵蝕値を減らしてしまう。おまけに複数取得も可能。

取得はちょっと重いが、攻撃に使うもよしミドルから低燃費で支援をばら撒くもよしと大活躍ができるだろう。


ここまで見ると「お、いいじゃないか」と思うかもしれない。しかし簡単にウマい話はないのだ。そもそもそんなにウマければこんな項目書く必要なんてない。


続いて従者を扱うにあたってのデメリットを書いていこう。……はっきり言ってデメリットの方がでかい。本当にでかい。かわいそうなくらいでかい。

これこそが従者を扱うビルドそのものがネタ扱いかつ敬遠されがちな所以である。従者とは普通のビルドに飽きてしまったジャーム達が嗜むべきものである。


「本体のダイスが減る」

従者召喚中、本体はあらゆるダイスに-3個のペナルティを受ける。攻撃を捨てるならまだしも、アタッカーにとって決して無視することはできない値だろう。

なお、当然ながらこれがルールブックにおいて明確に表記されている唯一のデメリットである。


「経験点が嵩む」

実際、従者は湯水のような経験点があれば―――言って見ればエネミーとしてはクソ強い。しかし経験点の限られるPCはそうもいかないのだ。

基本となる《赤色の従者》はもちろんのこと、《血の絆》《愚者の兵装》《赤河の従僕》《声なきものども》などのエフェクトを外付けしていく必要がある。

無論、これらのエフェクトは本体に適用されないので、本体が動くとなれば更に経験点を費やさねばならない。


「侵蝕が嵩む」

メジャーアクションの侵蝕率問題については先述の「従者の安らぎ」で解決出来ないこともない。しかし、従者を扱うにあたって侵蝕率が増える要素はそれだけではないのだ。

まず従者を作るだけで侵蝕率が5増える。細々した従者関連のエフェクトを取得すれば基本侵蝕率までもりもり上がる。そして従者の数だけメジャーアクションの侵蝕も増える。

PCで従者を扱う限り、侵蝕率問題からは絶対に逃れられない。その方法は唯一、ジャーム化する以外にないのである。


「素の従者が脆い」

《赤色の従者》Lv1だけだと能力値に関わらずたったのHP15である。もちろん装甲やガード値なんてものはない。ボスはおろか雑魚の攻撃一発で沈んでしまう。

おまけに従者はタイタス昇華も使えず、HPが0になった時点で消滅する。当然ながら、対策を練らねばあっという間に従者の屍の山が築かれることになる。

せっかくの高い行動値も、対策なしでボスの《加速する刻》による割り込み攻撃なんて食らえば目も当てられない。

そして、そのためにまたまた経験点を割り振る必要が出てくるのだ。実に悩ましい。



・じゃあどうすりゃいいんだよ


……とまぁ、従者は何も考えずに使えばデメリットばかり目立ってしまい、リソースが限られたPCが扱うには手に余りすぎるじゃじゃ馬である。

ただでさえブラム=ストーカー自体が中〜上級者向けシンドロームと評されているだけあり、まともに扱うにはジャーム化……もとい相当ダブルクロスに精通している必要があるだろう。


しかし従者は面白い。従者混じりの複雑怪奇、奇妙奇天烈なビルドを完成させた時の達成感は筆舌に尽くし難く、またそれに似あった性能を持ち合わせている。

というわけで、読者の諸君が少しでも理性を投げ捨てる助けになるよう、ここでは従者について事細かく解説を行うことにする。


「従者と本体でやることは統一する」

PCが従者を扱うにあたっての鉄則中の鉄則。間違っても「本体が従者にメジャーアクションでバフを撒く」なんてビルドを考えてはいけない。

おすすめできるのはRC攻撃か支援だろう。強いて唯一の例外をいえば、本体がカバーリングで従者をひたすら守り続ける、程度か。


「回数制限と侵蝕が緩いエフェクトを選ぶ」

これもまぁ、当然といえば当然である。いくら強力なエフェクトであってもシナリオ1回限りであれば従者の意味がない。

起点エフェクトは回数制限無し、切り札は最低限1シナリオに3回は使えるようにしておきたい。

ただ回数制限がないからと調子に乗って《神獣撃》やら《ストライクモード》やらを連発していたらジャーム化まっしぐらである。1コンボ当たりの侵蝕率には気を配ろう。

ついでに「従者の安らぎ」は経験点が重いので、そもそもの侵蝕率の緩いエフェクトを選択した方が手っ取り早い。

筆頭は《サイレンの魔女》や《災厄の炎》といった強力なRC攻撃群、素手攻撃と相性が良い《死神の手》、手間はかかるが《咎人の剣》などなど。


「カバーリングは大事」

故に回数制限のないカバーリング系のエフェクトは可能な限り取得しておきたい。最悪従者の数が少なければ《カバーディフェンス》でもまぁ、問題は無いだろう。


・従者と各種ビルド


「攻撃型」

白兵と射撃はダイスを、RCは固定値を上げやすい。交渉は基本的に趣味の領域と思われる。

従者は技能やユニークアイテムで固定値を増やせないので、Dロイスやエフェクトに頼る必要が出てくる。特にRBならオリジン系エフェクトが強い。


「防御型」

単純にHPを積んでカバーリングをするだけでもよいが、《孤独の魔眼》など従者に攻撃を吸わせるエフェクトやDロイスとの相性が抜群。

ただ、従者を使い捨ての盾として扱うのはややもったいない感は否めないのでしっかり防御力を、少なくともHPは盛っておきたい。


「支援型」

高行動値の従者に先んじてバフを撒かせる、自分自身に使えないバフを本体に投げる、タイミングや対象をずらしてバフをばら撒くなどテクニカルな芸当ができるのが強み。

また、専用アイテム「従者の安らぎ」で侵食率を抑え、気軽にミドルシーンからバフを使っていくことも可能。逆にそれらを活かさないなら、あえて従者に使わせる必要は無い。


「妨害型」

はっきり言って、あまりおすすめはできない。「同じエフェクトの効果は重複しない」ルールの存在によって、対象が異ならない限りその汎用性はがくっと下がってしまう。


・従者と各種シンドローム


「エンジェルハィロゥ」

カバーリングエフェクトは無いが、従者を天敵の範囲攻撃から守る《ミスディレクション》の存在だけでもこれを相方にする価値は十分だろう。

そのほか回数制限が緩く本体も扱える範囲攻撃《破壊の光》、手数が多いことを最大限活用できる《アフターエフェクト》、カバーリングした従者に《鏡の盾》を使わせるなど。


「バロール」

同じくカバーリングこそないものの、範囲攻撃から従者を守れる《孤独の魔眼》が優秀。《ミスディレクション》とは場合に合わせて使い分けるとよい。

攻撃面は同エンゲージ不可ではあるもののコストパフォーマンスの良いRCエフェクト《黒の鉄槌》を使うと良い。


「ブラックドッグ」

多彩な常時エフェクトで侵蝕率を抑えつつ従者を確実に強化できるのが何よりの強み。固定値を伸ばしやすい性質も従者とマッチする。

問題はアイテムに頼る強化がそれなりに多く、《知恵あるもの》の取得が必須になってくる点であろうか。


「ブラム=ストーカー」

《原初の赤:赤色の従者》を取得みたいなド変態ビルドでない限り必ず絡んでくる。従者の本家とだけあって、それ関連のエフェクトは専用含めて無駄に豊富である。

中でも従者にアイテムを常備化させる《愚者の兵装》は強い。


「キュマイラ」

やることを言えばただ殴るだけなのでわかりやすい。素では素手しか使えない従者の性質ともマッチする。ガード、HP増加、カバーリングも揃っているので防御型も不可能ではない。

《ターゲットロック》と《狩りの統率者》を組み合わせれば、侵蝕率を抑えつつ従者の火力を大幅に盛ることができるのもポイント。Dロイスも「羅刹」の方が従者とよく噛み合う。


「エグザイル」

同じく素手を強化するのが得意なシンドロームで、起点にもなる《死神の手》が強力である。

キュマイラ同様カバーリングエフェクトも存在し、HPをガン積みできる《異形の刻印》を取得すれば防御型も大いに安定する。もっともガードだけは不安だが。

リミットエフェクト《守護者の巨壁》を使用すれば敵の攻撃から従者を守るか、あるいは従者1体に敵の攻撃を吸わせることができるので余裕があれば取得を強く推奨。

本体が戦闘能力を投げ捨てて肉壁に徹するとなれば《サポートボディ》も中々優秀。《ウルトラボンバー》の自爆効果も実質ノーリスクで扱うことが可能。

なお、間違っても従者に《融合》を使わせてはならない。そんなものに手出ししてしまえばPLもPCもジャーム化一直線である。


「ハヌマーン」

やはり《サイレンの魔女》の存在がでかい。《オリジン:レジェンド》、Dロイス「精鋭」、専用アイテム「従者の回路」などによる固定値積みからの乱射が極めて凶悪。

その他、単純に従者の火力を上げたいならば《狂騒の旋律》が優秀。ただしカバーリングが要となる従者型に暴走がついてくるのが悩みどころ。

一方でハヌマーンの制限エフェクトは1回限りの切り札が極端に多いので、従者で上手く活かすのはちょっと難しい。


「モルフェウス」

移動及び《知恵あるもの》が必須になるが、回数制限がなく高係数の《インフィニティウェポン》と《咎人の剣》辺りの運用が有力候補。

それらを採用しないならば、武器を用意する必要もなく装甲無視がついてくる《インスタントボム》の使い勝手が良い。範囲攻撃の《ギガンティックモード》だってある。


「ノイマン」

基本的に支援型向け。その場合、侵蝕率制限がなくミドルからC値を下げられる《アドヴァイス》を雑に乱発する情報無双が何よりの特技。

頭数も増えるし、自力で《生き字引》《天性のひらめき》を使うことだってできる。「従者の安らぎ」で侵蝕を減らせばさらに安定する。

攻撃に回るならば武器が必要になってくるが、開幕で散開できる《ファンアウト》、従者のダイスを増やせる《戦術》の存在が頼もしい。

《愚者の兵装》取得がめんどくさい、あるいは余裕が無いというならばBCで追加された《即席武器》を扱ってみるのも良いかもしれない。


「オルクス」

回数制限のあるエフェクトが多く、《妖精の手》なども従者で使う理由は少ない。支援型もソラリスの壁が厚い。故にオルクス単体だといささか扱いにくいのが実情だろう。

言わずと知れた《赫き剣》《オーバーロード》の凶悪コンボもHPの低い従者だと複数回使用が困難なのも難しい。

一応《領域の盾》で仲間に従者をかばわせるという荒業は他のシンドロームには真似することはできないが、するならば予め他のメンバーと擦り合わせておくことを強く推奨する。

……《雨粒の矢》?奴は死んだよ。


「サラマンダー」

強力な白兵武器作成の《氷炎の剣》《地獄の氷炎》、白兵射程延長の《フレイムタン》、回数制限なしのRC範囲攻撃《災厄の炎》《氷の塔》が優秀。

伝家の宝刀《プラズマカノン》も回数制限がなく、120%制限の《氷熱の軍団》で従者含めた味方全員に係数4の火力を与えられるのも美味しい。

変則的ビルドならば《氷壁》で敵の攻撃を打ち消すディフェンダーも面白いだろう。もちろんカバーリングの《炎陣》もある。


「ソラリス」

支援型従者の鉄板。ソラリスは行動値を上げにくい故、それを解決する従者の存在は心強い。《さらなる力》のような対象を変更出来ないバフも少なくとも2回は撃てる。

惜しむらくは《狂戦士》などの強力な支援エフェクトが軒並み制限:80%以上で、ノイマンのようにミドルから活躍できる支援が少ないことか。


「ウロボロス」

以上に挙げた12シンドロームの特徴全てを兼ね備えるため、欲しいエフェクトをつまみ食いしたい従者型をするにあたって侵蝕率以外の問題はほぼ完全に解決される。

ただその侵蝕率こそが唯一最大の問題である。欲しいエフェクトが取れるのは良いが、ただでさえ侵蝕率との戦いである従者型でさらに侵蝕率が上がるのは死活問題。

キャラシは投げ捨てるものだと仰る方は別に問題ないのだが、基本的にそうはいかないので「従者の安らぎ」などで少しでも節約する手段を考えねばならないだろう。


・従者とDロイス

従者は「制限:Dロイス」のエフェクトを扱えず、回数制限があるものは従者で使う必要が薄いものが多い。

また、「錬金術師」や「達人」のように回数制限のない効果で侵蝕率が増えるものも、ただでさえ嵩みやすい従者型にとって不都合なので避けるべきだ。

故に取得するものはよく吟味する必要がある。というわけで、ここでは従者と相性が良いDロイスをいくつか紹介しよう。


「対抗種」

侵蝕率増加なしで攻撃力+2Dは手数の多い従者型では強烈。代償のHP3喪失も、どうせ紙以下の耐久である従者にとって些細な問題であろう。


「実験体」

こちらも侵蝕率増加なしでダイスを増やせるのが美味しい。【感覚】や【精神】を伸ばせば行動値も上がり、先手を取りやすくなるのも強み。


「戦闘用人格」

実験体がダイス+4個に対して、こちらは侵蝕率100%以上限定だがダイス+5個となる。問題はただでさえ侵食の嵩む従者型でバックトラックのダイスが減ること。

ダイス1個増加に対して分不相応なデメリットであるため、あえてこちらを選択する必要は少ないと思われる。


「生還者」「安定体」

侵蝕率が不安な従者にとってお守りのようなもの。他に取得するDロイスがなければとりあえずこれらでいい。


「複製体」

とりあえず常時エフェクトがここでも猛威を振るう。常時エフェクト以外は侵蝕値が2も上がるので従者には不向きだろう。


「精鋭」

技能レベル+5は従者にも適用される。少しでも固定値が欲しい方は採用しても良いだろう。固定値は裏切らない。


「業師」

トライブリードでも切り札が増えるのは強力。特に《時の棺》や《隠された世界》を引っ張り出してこれば従者の生存性が大幅に上昇する。


「奇跡の血」

従者でトライブリードとなればこちらも選択肢に入る。制限こそあるがメジャーアクションの侵蝕-4はコンボの幅が広がる。

ついでに「従者の安らぎ」を4つ取得すれば-8であるが、流石に経験点が必要になってくるので高経験点レギュで輝くと言っていい。


「奇妙な隣人」

RB以外でオリジン系エフェクトが欲しい時に使う。無論、そもそものワークスをRBにした方が高効率であることは言うまでもないので、エンブレムを活かすなど工夫が必要。


「機械化兵」「不死者」

耐久型従者向けDロイス。常時HPダメージ軽減は心強い。


「黄昏の支配者」

セットアップで従者を生み出すことが出来る専用エフェクト《従者の行進》を取得する。おまけに出てくる従者は未行動……なのだが、これまた難儀な代物なのである。

まず《従者の行進》の侵蝕が5とかなり高い。《赤色の従者》を組み合わせた時点で侵蝕率上昇が10になってしまうのだ。

とりあえず従者を呼び出してカバーリングさせればロイス1つは守れると言いたいところだが、侵蝕率上昇とDロイス枠、そして経験点15の割に合わないのが実情である。


「羅刹」

対抗種と言うことは変わらない。デメリットに関してもどうせ素手で殴ればいいだけの話なのであんまり気にする必要は無いだろう。


「守護者」

シナリオ1回、攻撃対象を単体に変更できる。《孤独の魔眼》とは違ってシーン攻撃なども吸えるし、シンドロームやブリードを選ばないのも強み。

もちろん、同卓する他のPCに取得してもらってもよい。


「遺産継承者」

基本的に遺産の効果は従者には発揮されないが、複製体の発展系としてエフェクトを自動習得する遺産を入手するという裏口が存在する。

具体的には「イフリートの腕」で《炎陣》など。他の遺産に関してはここで紹介するには数が多すぎるので、各自LMやHR、RWを参照していただきたい。

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