やがて蝶は羽化する。哀しみと愛しみの向こうにある未来へはばたくために

 まず、世界観がいい。精霊が宿る石、竜に魔物に神住まう国々。でもそこにラジオやヘッドフォンがあり、蒸気機関車が走っていて、近代や現代もかすかに覗く世界は王道ファンタジーでありながらどこか独特でもあります。ハイファンタジー好きな人は寄ってらっしゃい見てらっしゃい、ですね。

 そんな世界を記憶が定かではないカナラが穏やかに、時にシリアスと家族と共に過ごす話かと思いきや、第二話にして予想を裏切られて未知の世界へ。そして知る、世界の形と真実と真意。小さな不満と満足を抱えたどこか幼く頼りない少女が、外の世界と真実を知り、記憶を取り戻してしっかりと抱える姿を見せるのが、切なくも爽やかな気持ちにさせてくれます。

 旅の道連れとなる二人も個性的ですし、魔女のシィラも出番が短いながらに印象的ですね。何故か、妖艶でミステリアスな美女として脳内でしゃべってくれてます(笑)。そして最後の頼りない過保護父兄……鬱陶しいでしょうけど憧れます(え)。