第9話 兄妹デートは取材の為に

 

「おーーい、たまき準備出来たか? そろそろ行くぞ~~」


「え、ちょっと待って、もう少し~~~」


 妹とデー……出かける事になった。って言っても特に大袈裟な話しではない。 今までちょくちょく買い物とかに付き合った事もあったし……ただ、ここ1年余り、妹が中学3年になった頃からは一緒に出かける事は無くなった。


 妹の受験もそうだけど、やっぱり何かお互い恥ずかしかったんだろう、兄妹で買い物とか友達に見られたらって……まあぶっちゃけそんなに友達いないんだけどね、俺も妹も……


「久しぶりだな、二人で外出って」

 いまだに目的がよく分からない、漫画の為と言っていたが果たしてそれが本当なのか……まさか妹物で良くある手口で……


『私……実は……ずっと前から……お兄ちゃんの事を』

『だ、だめだ、俺たちは兄妹なんだから』

『そんなの分かってる、でも……それが私の気持ちなの! ずっと思い続けた気持ち』

『環……』

『付き合ってなんて言わない……でも……初めてはお兄ちゃんに』


『た、環!』


『お兄ちゃん!』



「お兄ちゃん! お兄ちゃんってば!!」


「うお!!」


「何ボーーっとしてるの? 準備出来たよ」


「あ、ああ」


 妹が俺の目の前にって、やべえ俺……今何考えてたんだ? そんなわけ無いだろ……あり得ない。いや、本当最近おかしい……あの漫画、瑞希先生の漫画を読んでからなのか、変に妹を意識してしまう。


「お兄ちゃん? えっと、どうかな?」

 妹は何か言って欲しい様な仕草で俺を見つめる。


「あ、ああ、似合ってるなそれ」

 妹の格好は、ストライプのワンピース、腰に大きなリボン、髪はポニーテールにしてベレー帽を被っている。いつもより少し大人っぽいイメージだ。


「本当?」


「いつもより大人っぽくて、いいんじゃない?」


「へへへ、やったね、じゃあ行こうかお兄ちゃん」


「あ、ああ」


 休日の早朝から妹と一緒に出かける。そろそろ季節は秋なんだが、まだそんな気配は感じない、ただ朝晩は若干過ごしやすい気温になっていた。


 とりあえず妹と二人で家を出て並んで歩きながら駅に向かう。


「環どこ行くんだ?」


「えっと……そうか…………え! それはお兄ちゃんが決めるんじゃないの?!」


「いや、だって取材なんだろ?」


「だからこそお兄ちゃんが決めなきゃ駄目でしょ!」


「そういう物なのか?」


「だって……デートって彼氏が行き先を決める物じゃないの?」


「か、彼氏!?」


「え? あ、ち、違うから! あくまでも取材よ取材、振りだからね。か、勘違いしないでよね、お兄ちゃんが、彼氏とかなんて思ってないんだからね!」


「なぜそんなテンプレの様なツンデレを?」


「だ、誰がツンデレよ! べ、別にデレてないし!」


「それがデレだって……まあ、いいや、んじゃどこ行くかな~~?」


「へ、変な所に連れていったら、許さないんだからね」


「……どうした? さっきから……なんだそのキャラは?」


「え? べ、別に……」


「それも取材なのか? まあいいや、とりあえずそうだな~~って言われてもデートとかした事ないし……定番の映画かな?」


「うん、いいんじゃないかな?」


「何をやってるか分からないけど、行って決めるか」


「うん」

 笑顔の妹に少しドキッとする、な、なんだ……この気分は……それにこのツンデレも……なんかまるで……瑞希先生が描いた妹にそっくりなんだが……


「じゃ、じゃあ……はい」


「はい?」


「ほ、ほら!」

 妹が俺に手を差し出す…………何かな? お金?


「もう!」

 そう言うと妹は俺の手を握る! え! 


「しゅ、取材だから、取材なんだから!」


「お、おお取材、取材ね……だったら……こうだろ!?」

 俺は繋いだ手を一旦離し指の間に妹の指を入れて繋ぎ直した……いわゆる恋人繋ぎに……


「ふえええ!」


「こ、こう繋ぐんだろ!」


「う、うん、そ、そうだね、さすがお兄ちゃん!」


「お、おし、じゃ、じゃあ行くぞ!」


「うん! あ、別に楽しいなんて思ってないんだからね!」


「へいへい」

 妹との取材デートが始まった。しかし妹は一体何が目的なんだ? 取材ってプロでもあるまいし……しかし、似てる……本当に似てる……まるで……瑞希先生の妹が、ツンデレ妹が俺の前に現れた様な……そんな感じがしていた。





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