第7話 取材の為、取材の為なんだからね!
いよいよおかしい……なんだこの緊張感は……
夕食はいつも通り二人きりで食事……両親不在の夕食なんていつもの事だけど……今日はいて欲しかったよ。
「お兄ひゃん! ゆうひょくは、お兄ひゃんの大好きな、カレーにしたよ!!」
「あ、ああ……匂いで分かるよ」
「あ、ああ、そうだね、あはははははは」
噛みまくりの棒読み……なんだ? どうした? 何か盛ったか? いよいよ来たか?
俺の部屋にご飯が出来たと呼びに来た妹と一緒にキッチンへ向かう。いよいよ俺が妹に……なんて事は無いんだろうが、やはり何かおかしいのは間違いない。
まあ、妹の為なら別に死んでも良いけど、理由位は聞かせて欲しい……
そんな事を思いつつ、椅子に座って妹を見ると、自分の分と俺の分のご飯をよそいカレーを上からかける。
同じ皿、同じ量、テーブルに二つ置き、そのままスプーンを取りに……
俺にどちらか選ばせる気か! 妹はメンタリストなのか! 俺がヤバい方を選ぶのは、確定的に明らかなのか!
なんて冗談はこの辺にしておこう。さすがに俺をどうこうするなんて思えない。俺と妹はそんな兄妹関係を構築してはいない。
親よりも誰よりも信頼している妹……病弱だった妹……元気になって一番嬉しいと思ったのは多分俺だ! 俺は妹の為なら死んで良いくらい妹を愛している。
勿論兄妹愛だぞ、妹物のエロ漫画を最近読み初めて、少し、ほんの少し興奮したけど、別に妹に手を出す気とか全く無いぞ!
ロリ物読んでる奴が、ロリ物読んで興奮したからって本物に手は出さないだろ? それと一緒だ! 違うって思った奴は悪い事は言わない、今すぐ自首しなさい!
とりあえず俺はカレーを一口……ああ、旨い! いつものカレーだ……妹カレー……妹カレーってなんか良いな。商標登録して売ろうかな?『妹カレー®️』
しかし、それにしても……ベタに緊張してるな……ご飯食べずにずっとカレーのルーばかり食べてるよ……
さすがにこのままってわけにはいかないだろう……俺は思いきって妹に聞いてみた。
「なあ、
「ふぁい!」
スプーンを咥えつつ目を見開き驚いた顔で俺を見る妹……
「…………なんかあった?」
「いえ、何も! 全然! これっぽっちも!」
「絶対何かあった言い方だよな?」
「な、何も……」
「本当に何かあったのか? 俺じゃ頼りにならないかも知れないけど」
「そ、そんな事ない! お兄ちゃんはいつも頼りになるし、優しいし!」
「あ、ああ、ありがと」
「ううん、どういたしまして……」
スプーンを咥えたまま照れながらうつ向く妹、可愛い可愛いな俺の妹は……いや、だから勘違いしないでよね! 兄妹として妹は可愛いって思ってるだけなんだからね!
「それで……何かあったのか? まさか……苛めか! くっそ誰だ俺の大事な妹に! ぶっ殺してやる!!」
「ないない、苛められてない!」
「じゃあどうした? あははは、まさか恋の悩みとか?」
「え!」
「え!」
「…………」
「環……まさか……彼氏が!」
「いないいない、全然いないよ」
「そ、そうか……」
「お兄ちゃん? 何でホッとしてるの?」
「いや、えっと……そう、お兄ちゃんを差し置いて先に彼氏を作るなんて、何事だ~~って……」
「お兄ちゃん彼女いないの?」
「いないいない、出来る兆しもない」
「じゃあ好きな人は?」
「2次元でいいなら色々いるぞ」
一杯いすぎて書ききれない、この間迄は天衣ちゃんだったけど、今はやっぱりミーシャちゃんかなぁ? ツンデレ最高……誰がロリだ!
「それは聞いてない……あ、でもちょっと聞きたい気も」
「俺の事は良いんだよ……本当に大丈夫か?」
「大丈夫…………じゃない……気も」
「やっぱり……俺でよかったら相談に乗るぞ?」
「うん、あのね……えっと……ねえお兄ちゃん…………キスしたら……どんな気持ちになるのかな?」
「……」
「お兄ちゃん?」
「あ、ああ、ちょっと意識が異世界に飛んでたよ、えっと……俺に聞かれてもしたこと無いから分からないとしか……」
枕相手に想像で何度かした事を思い出してしまった。そして、ついその時の気持ちを言う所だった……え? どんな気持ちかって? やってみたら?
「したこと……無いんだ」
そう言った瞬間、妹がニヤリと笑う……な、なんだ、それは……余裕の表情なのか? ま、まさか!!
「お前! まさか!」
「ないない、無いから悩んでるんだよ」
「はあ……何でそんな事で悩んでるんだ?」
「どうしてため息? えっとね……今ね……私……漫画を描いてるの」
「へーーーー、漫画……ああ、そういえば環って子供の頃良く絵描いてたよな、まだ描いてたんだ」
「うん」
「凄いじゃん、漫画家になるのか?」
「え? ああ、うん……」
「そうか、それで悩んでるのか」
「ああ、うん……そう」
「すげえな、プロ目指してるのか、知らなかったよ。新人賞とかに応募するのか?」
「え? あ、うん……」
「そうかーー、それでどういう話しを書くんだ?」
「えっと……恋愛物かな~~」
「おお、王道だな出来たら読ませてくれる?」
「え!!」
「なんだよ、駄目なのか?」
「えっと……その……恥ずかしい……」
「あはははは、まあそうだろうけど、プロを目指すなら恥ずかしがってちゃ駄目だぞ、俺の知り合いにも小説でプロ目指してる下手くそがいるけど、恥ずかしいからって誰にも言わずに書いているんだよそいつ、でもそんな根性でプロになれるわけ無いんだよ、わかって無いし才能もないよな、あははははは」
「だ、誰の事かな?」
「まあ、とにかく、頑張れ! 応援してるぞ! 俺に出来る事があったら何でも言ってくれ!」
「本当!! 今何でもって言った?」
「え? あ、いや、BLはちょっと……」
「ん?」
「いや、なんでもない……」
「お兄ちゃん……あのね、じゃあ、私のお願い聞いてくれる?」
「えっと……俺に出来る事なら……BL以外でなら」
「あのね……明日ね……私と……デートして! あ、取材の為にだよ! お兄ちゃんしかいないから仕方なくだよ!」
「あーーそういう展開ね…………まあ……良いけど……」
「本当? やったああああ!」
というわけで俺と妹は取材の為にデートに行くことに……本当才能無いな、いつも同じパターンじゃねえか!
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