第8話 デートの準備は何処まで?

 

「嘘……ついちゃった」


 夕食を食べ終わり、部屋に戻る。

 食器洗いと台所の片付け、お風呂掃除と準備はお兄ちゃんがやってくれる。


 優しいお兄ちゃん……大好きなお兄ちゃん……でも……

 漫画家を目指してるって……つい……嘘を……


 初めてかも知れない、お兄ちゃんに嘘をついたのは……でも私は漫画家としてはデビューしたて……まだまだの実力、目指してるって言っても嘘ではない……うん、そうだよ嘘じゃない……今はまだまだ夢の途中なんだから……それに……言えるわけないよね、エッチな漫画を書いてるなんて……


「お兄ちゃんにエッチな子って思われたら……生きていけない……」

 無理、絶対に無理……お母さんやお父さんにバレるより無理!

 

「絶対に見せられない、見せられるわけない」

 バレたら軽蔑される……しかも妹物だなんて……まるで……まるで……


 私がお兄ちゃんの事を性的な目で見てるって事になっちゃう!


「無理無理無理無理、絶対に無理! そんな事お兄ちゃんに思われたら…………無理~~~~」


 隠すしか、隠し通すしかない……でも、漫画も書かないといけない。

 もう私はプロ……プロの漫画家なんだ……半端は許されない。

「期待している」これをそのまま受け取っては駄目。「期待しているよ」は、次は無いからって意味だ。


 折角貰ったチャンス、折角貰った仕事、自分の夢だった漫画家……


 この作品は必ず成功させたい、自分の本を……単行本を出したい。


「妹物……兄妹……私と……お兄ちゃん」

 そうだ、これは私とお兄ちゃんの物語、兄妹で愛し合う物語……物語なんだもん愛し合ってもいいよね、作り話なんだからいいよね……


 本当の兄妹で恋愛なんて現実ではあり得ない、そうだよこれはファンタジーなんだ。私はファンタジー作品を書いてるんだ。


 お兄ちゃんと私のファンタジー……おとぎ話……


「そうだよね、ふふふ、別に本当に付き合うわけでも、キスするわけでも……その……エッチするわけでもない。推理作家は殺人を犯罪を犯す必要は無いのと一緒、私とお兄ちゃんが……そういう事をする必要は無い、うん、そうだよ」


 想像、あくまでも空想の中の話。だから明日のデートも気分を味わうだけで、決して……その何かを期待しているわけじゃないし、私からお兄ちゃんに何かをするわけでもない………………手くらいは繋いでも? ほっぺた位迄なら? 胸とか迄なら…………


「ああああああ、何を考えてるのわたしいいいいい!」

 兄妹だよ、兄妹、私とお兄ちゃんは兄妹! 義理でもない間違いなく兄妹!

 そんな変な事をお兄ちゃんがするわけ無い、それどころか考えた事もないはずよ! そんな事するわけ無いじゃない!


「頭が妹物作家の脳になってる……妹作家って毎日こんな事ばかり考えてるのかな……やっぱり変態さんが多いって噂は本当なのかも」


 とりあえずお風呂にゆっくりと浸かって……えっと色々お手入れはした方がいざというときに…………いざって何よ! あ、でもほら転んだ拍子にとかで下着が見えちゃったりした時の事を考えて、上下お揃いの綺麗な下着は着けないとってブラが見えるってどんなシチュエーションよ、落ち着け私……あ、そういえば、デニムとかは脱がせにくいって前の作品の時に聞いた気が……じゃあワンピースでさっと脱げる様に……あ、でも、ワンピースって脱ぐ時になんか一気にやるぞ! って感じになるって言ってたよね。 男の人って焦らす方が興奮するって、お兄ちゃんもそうなのかな? じゃあミニスカート? 最近のミニってあったかな? えっと中学の時に買ったのしか…………



「違うううううううううううううう!!」

  ち、違う、私は何も期待なんかしてない!!

  ただのデート、ただの取材、雰囲気を味わうだけ、違う、違うんだからねええええ!


 私はベットの上で自分の恥ずかしい考えに、妄想に、暫くのたうち回っていた。



「おーーーい風呂沸いたぞ~~~入っちゃえ~~」


「あ、はーーーーーい」


 少し落ち着いた頃、お風呂の準備をしていたお兄ちゃんが私を呼ぶ。いつも通りのお兄ちゃん……お兄ちゃんは明日の事どう思ってるんだろう……お兄ちゃんって私の事……どう思ってるんだろう……






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