End of Evolution
四志・零御・フォーファウンド
百舌鳥早紀の×××
09,03,02
近年、妙な奇病の症例が増えているらしい。近いうちにその症例を研究する部署へ、私が異動になる旨を
09,03,19
例の部署への異動が正式に決定した。引っ越しの準備をする必要がある。
09,03,29
引っ越しが終わった。妹に引っ越しの手伝いをして貰ったお陰で、随分と楽に終わった。
09,04,11
部署が変わってから数日が経った。研究に夢中になり、しばらく何も書いていなかった。
奇病について分かったことがある。
名前は【有翼病】だ。名の通りの病で、生まれたばかりの赤子の背中に、真っ白な翼が生えるのだ。海外ではエンジェルなんかと呼ばれ、奇跡が起こったのだと騒がれている。
実に馬鹿らしい話だ。赤子に待っているのは100%の死だというのに。
09,04,20
【有翼病】は海外で研究が進んでいるらしいが、どうやって発生するのか原因は未だに不明だ。
研究が進んでいるらしいというのは、
――病を発症したら確実に死が待っていること。
――生まれたばかりの、人間の赤子にしか発生しないこと。
この2つしか分かっていないからだ。
09,05,01
一週間ほど、感染力についての研究を読み漁った。
結果、【有翼病】の感染経路について理解が不能となった。何が原因なのか全く分からないのだ。2つのことしか分かっていないと書いたが、2つのことも分かっていると、ここで訂正しよう。
09,05,22
ウイルスサンプルと、被検体を入手した。しばらく研究に没頭しようと思う。
09,11,24
教授でも手に負えないと言っていたこの病。恐怖すら覚える。
10,09,01
この病を治す技術が現代に存在するのだろうか。そのような考えが脳裏によぎる。
研究を進めれば進めるほど、その考えは強いものになるだろう。
10,12,31
去年の大晦日に実家へ帰らなかったら、妹にとても怒られた。大嫌いと言われた。それは悲しい。
去年の反省を生かして今年は帰ろうと思う。
11,01,06
正月に戻る予定だったが、妹に止められて中々研究に戻れなかった。しかし、後悔はない。頭がスッキリとして、今日は頭が回った。サンプルの研究もだいぶ進んだと言っていい。
11,11,29
私は自らの手を汚す。神というものがいるのであれば、私は今すぐにでも殺されるだろう。
11,12,03
実験、研究とは、最後には倫理との闘いだと相場は決まっている。2年前に手に入れた被検体はすでに死んでいた赤子だったが、今度は違う。
この子は生きている。
12,01,11
神に背くことの出来ない研究員が一人、ここを去った。
12,03,21
被検体コード02が死んだ。原因は不明。【有翼病】のサンプルを体内に入れただけだ。【有翼病】の症状が一切現れなかった。やはり、感染経路が不明なままだと実験ができない。
12,05,09
感染経路は未だに不明だが、被検体のそばに【有翼病】のサンプルを置くと、感染することが判明した。……しかし、この場合、感染と言っていいのかは分からない。どちらも密室空間に入れた状態だったのだ。空気感染する経路がない。
研究を進める。
12,11,29
試行錯誤の結果、【有翼病ウイルス】が赤子の半径1km以内にあると、赤子が【有翼病】を発病することが判明した。しかし、理解できないことが多い。1kmという長い距離で感染するとはどういうことなのだろう。もちろん、どちらも密閉空間に入れた状態で実験を行った。
赤子を【有翼病ウイルス】に1km近づけただけで赤子は【有翼病】になる。この事実を世間に発表するかどうか、数日後に会議が開かれる。
……荒れることは目に見得ている。
12,12,03
会議は酷いものだった。
確かに、まだ確実とは言い難い研究結果だった。しかし、この病の恐ろしさに気付いていない阿呆どもと言葉を交わすのは腹が立つ。私たちの研究チームは会議が終わる前に部屋を出ていた。
12,12,11
思うように研究が進まない。
12,12,16
気分転換に、久しぶりに教授の研究室へ足を運んだ。
やはり、教授は天才だ。私が何日も悩んでいたことを、数分の会話の中でいとも簡単に解決してしまった。
12,12,25
教授の助言もあって、研究も進んできた。
しかし、仮にだが、神という存在があるとしよう。
私は再び神に背くことになる。
12,12,31
もう神のことなど考える必要はない。いや、考える余地がないほどに、これからは
13,01,01
私はアダム、あるいはイブになった。
――どちらも偽りであることには変わりないが。
End of Evolution 四志・零御・フォーファウンド @lalvandad123
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