親の作った借金を立て替えてもらった代わりに、高校を休学してお金持ちの朝比奈家に奉公に行くことになった女の子、紅葉。
何とも気の毒な状況ですけど、奉公先で待っていたのは、三人の美形兄弟でした。
イケメン三兄弟と一つ屋根の下、ラブコメ的な展開ですね。辛い奉公に来たはずが、なんて羨ましい状況……とは、一概には言えないのですよね。
この三兄弟、いずれも一癖ある人ばかり。小学生の末っ子は生意気だったり、年上の長男は女の敵だったり。
更には彼らの祖母、梅さんまで強烈なお人。どれくらい強烈かと言うと、先に上げた三兄弟、もしかしたら主人公の紅葉まで食ってしまいそうな方です。ス〇ーウォーズのヨー〇のような人だとか、妖気を放っているとか、色々凄い事を言われている人なのですよ。
どんな人物なのか気になった方は、本編を読んでみてください。彼女の魅力は、レビューではとても語り切れませんから
こんな家で一年も奉公するだなんて大丈夫かと、心配になりました。しかもこの家族には、ある大きな秘密が隠されていて……
沢山の困難を乗り越えて、奉公を続けていく紅葉。天真爛漫で、何が起きても、誰に対しても真っ直ぐにな彼女がとても素敵で、朝比奈家の面々も紅葉と一緒に過ごしているうちに、だんだんと変化が産まれていきます。
どんな時でも前向きで、体当たりでぶつかっていく紅葉の存在は、読者にも元気を与えてくれましたよ。
三兄弟や梅さんのキャラクターもとても魅力的で、一人一人に強い愛着がわきました。
出会い、共に過ごしていくことで、絆を深めていく物語。読み終わった後も、今後の展開を想像せずにはいられない、魅力あふれるお話でした。
家族の借金のために一年間高校を休学して、大邸宅の朝比奈家で住み込みの家政婦をすることになった紅葉。
そこには巨大猫のフジコ、尋常ならぬ妖気を漂わせている梅さん。そして、人の心を読む覚《さとり》の力を持つ美形三兄弟、千弥、廉弥、悠弥がいた。
……なんだか妖怪屋敷のような紹介になってしまいましたが、あながち間違っていないような気もします(笑)
ストーリー的には決して笑いごとでありません。美形兄弟に囲まれての逆ハーレム? なんてニヤニヤしている場合でもありません。それどころじゃありません。←
けれど、深刻な展開でも重苦しい雰囲気にならないのは、やはりキャラクターの力でしょう。明るくパワフルで物怖じしない主人公の紅葉をはじめ、登場人物たちが皆とにかく魅力的で楽しい。
中でもね、梅さん。紅葉にはもはや人外あつかいされている梅さん。わたし、梅さんが愛しくて愛しくてしかたありません。その強烈なキャラクターはぜひ本編で確かめてください。
ドラマ性とキャラクターの魅力と、それをあますことなく読者に伝える繊細な描写力。最後まで飽きさせません。ぜひ読んでみてください。
人の心を読める妖怪、覚(さとり)────。
その存在を知る人も少なくはないかと思いますが、本作の覚は妖怪ではなく、見目麗しき三兄弟。しかも大豪邸に住むセレブです。
そんな覚の住むお屋敷に、何の因果か高校を休学してまで家政婦としてやって来たのが、本作のヒロインである紅葉。
超貧乏な家庭で育った紅葉は、宇宙最強の戦士にそっくりな梅さんや迫力あるもふもふのフジコ、個性豊かな三兄弟に翻弄されつつ奮闘しますが、やがて覚をめぐる事件に巻き込まれてしまいます。
明るく前向き、誰かのためならかなりの無茶をしてしまう紅葉に、人の心が読めるはずの覚たちが翻弄されてしまうのが何とも微笑ましくキュンとしてしまいます。
タイトルの『覚トリ』の意味が途中で明らかになりますが、物語の最後にはその存在の意味を再び考えさせられるという、ストーリーの妙も楽しかったです。
再読ですがやはり面白いです。
人の心が読めるという特殊な能力を持つ美貌の三兄弟と、そこへやって来たお手伝いの紅葉。逆ハーレム的な環境は誰もがうらやみそうですが、そう甘くは物語が進まないところがいいです。特殊能力そのものよりも、それを持っていることに対する鬱屈した気持ちがよく描かれているので、登場人物たちが現実離れせず人間味があります。
そして、彼らのために雇われた紅葉という主人公がとても魅力的です。健気でひたむきなヒロイン、ではあるのですが、その真っ直ぐすぎて正直すぎる性格と言動が非常に痛快です。それでいて時には人生を悟ったような深いセリフを放ってくれたりするので侮れません。
キャラクターそれぞれの個性が立っていて、随所に散りばめられたユーモアでずっとクスクス笑いをしながら読んでしまいます。ラストはほのぼのと気持ちの良い読後感。
ラブコメとファンタジーとシリアスの配分がちょうどよいエンターテイメントです。