琵琶湖を感じる

陽月

琵琶湖を感じる

 近江大橋を渡り、湖岸道路を北上する。目的地は、烏丸からすま半島だ。

 湖岸道路と言うだけあり、左手には琵琶湖が広がっている。

「やっぱり、琵琶湖は広いね」

 妻が助手席で、呟いた。既に 10分ほど湖岸道路を走っており、左手にずっと琵琶湖が見えている状態だから、そう思ったのだろう。


 もともとは、京都への旅行だった。ただ、せっかく琵琶湖の近くまで来たのだから、日本一広い湖を見ておこうという話になったのだ。

「行き先は、琵琶湖博物館だっけ?」

 妻が、スマホで検索を始める。

「烏丸半島だっけ、蓮の群生地だと聞いたことがあるけど」

「蓮は、全滅しちゃったみたい」

 スマホで見つけた記事を教えてくれる。

「あっ、でも同じ烏丸半島にある水生植物公園では、蓮があるって」

「じゃあ、せっかくだしそっちも行っておこうか」



 琵琶湖博物館の駐車場に駐車をすれば、目の前に琵琶湖が広がっていた。

 ここは、博物館に入る前に琵琶湖を見学しておくか。

 同じことを考えたのか、岸には先客が、若いカップルがいた。


 正面に対岸が見えるものの、左右はずっと琵琶湖が続いている。

「やっぱり琵琶湖は広いね」

 カップルの女の方の声が聞こえてきた。

「いやいや、ここは琵琶湖の下の方の細くなったところやから。上の方はもっと広いから、こんなもんじゃないから」

 男の方が、琵琶湖の広さをアピールしている。地元民なのだろう。


 隣にいた妻が、腕をつんつんとつついてきた。その合図に、妻の見れば、私にスマホの画面を見せてくる。

 画面に映し出されていたのは、地図だ。現在地の拡大図から、縮小して見せてくれる。

 なるほど、妻も先ほどの男の言葉を聞いて、気になったのだろう。

 確かに、今いるのは琵琶湖の下の方の細くなったところに過ぎなかった。ずっと左手に見えていた琵琶湖も、琵琶湖全体からすればほんの一部に過ぎないことが、地図から分かる。

 本当に、琵琶湖は広いのだと、実感した。



 琵琶湖博物館では、琵琶湖の歴史と、生物が展示されていた。

 琵琶湖が誕生したのは、およそ 400万年前、当時は伊賀にありそこから時間をかけて移動し、現在の姿になったのは、40万年だそうだ。

 世界でも有数の古代湖、60種を超える固有種もいて、その代表がビワコオオナマズだ。


 琵琶湖博物館を周り、琵琶湖に関する知識を得る。

 遠い昔の化石の展示もあれば、近い昔、昭和の生活の展示もある。

 水族展示室は、淡水生物の展示としては国内最大級とのことだ。水族館と言えば、やはり海を想像してしまう。

 淡水生物の展示は、やはり琵琶湖という存在があってこそなのだろう。


 そのまま、琵琶湖博物館内のレストランで昼食にした。

 バスやナマズの天ぷらのメニューもあったが、興味と勇気が私の中で格闘した結果、興味を満たすだけの勇気が出ず、無難に近江牛のどんぶりを選択した。

 妻は果敢にもバス天丼に挑戦していた。感想は「普通の魚の天ぷら」とのことだった。



 腹を満たして、隣の水生植物公園みずの森へむかう。

 玄関は普通にプランターに植えられた植物だが、水生植物公園と言うだけあり、スイレンなどの水生植物の展示も豊富だ。

 温室もあり、グルッと見て回る。植物園だから、季節により見ることができる花が異なるのはしかたがない。


「ねえ、ハスソフトクリームだって」

 ロータス館で、妻がまた妙なものを見つけた。

「じゃあ、せっかくだし、食べていこうか」

 ハスうどんもあったが、さすがに昼を食べたばかり、ここはソフトクリームだけにしておこう。

 薄い緑色のソフトクリームは、そもそもハスの味を知らないこともあり、こんなものかという印象だった。

 強烈な味があるわけではなく、さっぱりしていて、普通に美味しかった。


 そこそこの広さがあり、ゆっくりと見て回れば、いい感じに時間が過ぎた。

 そろそろ京都駅へ向かえば、いい感じに新幹線の時間になるだろう。

 琵琶湖の下の方の狭くなった部分しか見ていないわけではあるが、それでも充分に琵琶湖を感じることができたと思う。

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琵琶湖を感じる 陽月 @luceri

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