憧れの女神を幸せにしたい。ネットストーカーが導き出した答えとは。

大学を中退して生きる目的も見当たらず、駅のホームで自殺を考えていた赤瀬。しかし線路に飛び込もうとする直前、高校時代に女神と崇めていた津森つかさの姿を目撃する。

「津森つかさに近づきたい」という動機によって、久々に生きる気力を取り戻した赤瀬は、インターネットを通じて津森の情報を漁り始める……。

ひきこもりがちな青年による実戦的なネットストーキング描写が楽しいのだが、本作の魅力はそれだけにとどまらない。
やたらと図々しい隣人女子・高鳥の恋愛に巻き込まれて、なぜか高鳥の好きな人をストーキングするハメになったり、実は高鳥が津森の友人だったりと思いも寄らぬ展開が相次ぎ、最後の最後まで読者の予想外のところへ話を転がしていくのだ。

厭世的な赤瀬が語る独特の幸福論や、わざとテンポをずらしてるような微妙な間の会話が非常に面白く、ネットストーキングというジメッとした題材を扱っていながら、読み終わった後には自然と暖かい気持ちになっている不思議な一作だ。

(インターネット越しな恋愛4選/文=柿崎 憲)

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