第2話 雨の遊歩道とトンネル

駅を降りて運賃を精算した陽太は

駅前の大きな案内板で遊歩道が存在することを知った。

「よし、ここを歩こう!」

そう決意し、約3kmある雨の遊歩道に足を踏み入れる。

もう時間は9時を過ぎていた・・・

雨なので誰もいない遊歩道をただ一人で歩く。

石の階段を何段も下り、沢の音が聞こえてくる。

小鳥のさえずりが聞こえる・・・

霧がとても幻想的だった。

「おっとっと」

石段を滑りそうになりひやっとした陽太だった。

ちなみに陽太は科学部で部活がない日はいつも家でなにかをしている

運動神経が全くない人だったのでもう疲れが出ていた。

温度は25℃、でも湿度が高かったりしてものすごく暑く感じた。

石段を下ると小さな東屋あずまやが陽太を出迎えた。

陽太はベンチに座りスマホを取り出す。

地図を開いた。すると・・・

「まだ100mしか歩いていないのか・・・」

ひとまず緑茶を取り出してそれを飲んだ。

「やべっ充電少ない、モバイルバッテリー5個持ってきて良かった」

モバイルバッテリーをスマホに差し入れて、また再出発。

かなり深い谷を吊り橋で渡る。

果てしなく続く断崖絶壁、脇からは川が滝となって本流に流れ注いでいた。

雨の谷間をスマホで撮影、但しやはり陽太はうかれていなかった。

"成績"これがどうしても頭から消えない。

"やっぱ勉強しなきゃ、家に戻らないと"そう心のどこかで思っていた。

「でも、家出したんだ、後戻りはしない」

そう谷と山々に向かって陽太は叫んだ。

整備の行き届いた遊歩道もいよいよ険しくなり獣道のようになっていった。

陽太は岩場で転んでしまった。

スマホの画面は幸いにして割れなかったが、足に軽い擦り傷を負ってしまった。

"もう帰りたい"それが脳裏をよぎる。

でも戻らない、決して後ろを振り向かない、そう決心した。

そして、歩き進んでいった先にはどこにいけばよいのか分からない

謎の湿地帯があった。

ひとまず広い道のようになっているところを進むと

「ズボンッ」

「しまった!」

陽太は間違って湿地帯に足を踏み入れてしまった。

靴がぬれてズボンも汚れたがしょうが無い、そのまま道っぽい場所を進んでいく。

その時だった。

不気味な音が遊歩道の先から響いてきた。

「疲れているから幻聴だろ」

少し不安だった。でも、

「家出したんだし、途中で死んでも構わない」

と珍しく強がっていた。

遊歩道を歩いて行くと途中に水力発電所があった。

そこからは車が通れるようコンクリート舗装されていて歩きやすかった。

だが、道路の大きさの割に車が一台も走っていないし、人通りもない。

雨風はますます強くなり谷が共鳴してさっきとは違う不気味な音を作っている。

すると、トンネルが現れた。

誰も歩いていないトンネル、目の前には出水事故が掘削工事中にあったらしく慰霊碑が建っていた。

「戦時中に出来たのか」

"1940年貫通"というものが刻まれていた。

雨宿りにもちょうど良さそうなトンネルだが、

照明が付いていないので真っ暗だし誰一人いない。

ただ、通らなければいけない。

陽太はしょうが無く突き進んでいった。

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陽太と一郎 常磐ひたち @Jobanhitachi

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