転移。それは、突如虫食いのように世界に穴を開ける、未知の災害の名称だ。人々はこの転移により住む場所を奪われ、場合によっては命の危険にも晒されながら、流浪の生活を強いられていた。
だがそんな厄介な災害にも、メリットがある。転移が起き、切り取られてしまったそのエリアには、入れ替わるように異世界の土地が広がり、未知の宝が眠っているのだ。それを求める者達、追跡屋《チェイサー》は、日々転移を追って駆け回る。
危なっかしいこの稼業を営む者達の間でも、とびっきりの命知らずがいた。それが本作の主人公、「狂血のチェイサー」ことセイジ・キササギと、彼の相棒であるミサキだ。
兎に角こいつら、ぶっ飛んでる。一周回って馬鹿なんじゃないかって思わせる程の、無謀な作戦を立てては実行し、転移による異世界の宝では無く、転移そのものを追い求めるのだ。命を懸けてまで、何で毎度災害のど真ん中へ突っ込むかって? その理由は、読んで確かめて頂きたい。
転移の正体は? そもそもこいつの原因は? 本当に異世界なんて、どこかに存在しているのか? どうやら国も追いかけているこの現象、ただの災害とは思えない。セイジ達と共に、この謎を追うのも楽しいだろう。
だがその際、忘れてはいけない。彼らは探偵でも役人でも無く、「狂血のチェイサー」であるという事を。
息もつかせぬ怒涛のアクションSF。是非皆様も、ご一読。
主人公は追跡屋―チェイサー―
追うものは青い転移陣
冒頭から疾走するような展開と確かな文章力にグイグイ引き込まれます。
私はSFやファンタジーに暗いのでその素晴らしさを称える語彙を持たないのが非常に残念なのですが。
格好いいのです。(暗い明るい以前の語彙力)
狂血と渾名される主人公。
ただ無謀なだけではないのです。
格好いいのです。(語彙力)
青い転移陣が、それは美しいのです。
恐ろしいものって美しいんですね。(語……もういいですか。ですよね。)
転移を追う狂血の目的は。
そもそも転移とは。
転移陣の青い渦に巻き込まれるように、彼等の運命も流れうねってゆく――
彼等とともに、私の鼓動も高鳴り青い導雷のなかを走り抜けるようでした。
素晴らしい物語。
今は読了したことが残念でなりません。
幸い、関連作品があるようです。
そちらで心を慰めつつ、作者さまには是非、続編をお願いしたいと思います。
待ってます!
スピード感に溢れるキレッキレの文章を読むのは、それだけで楽しい。
この物語の「世界」がどんなところなのかをゆっくり考える暇も与えず、ひたすら映像を見せるかのように進んでいく文章の切れ味は、まさにこの作者様の真骨頂。
もちろん勢いだけではありません。
「こまけーことはいーんだよ」と言わんばかりの勢いで突き進んだ物語は、いったん読者に一息つかせるように静的な描写で「世界の謎」を語ってから、再びエンジンをふかして怒涛の展開へと移ります。
この展開の妙が素晴らしいの一言です。
謎解きを楽しみつつ文章の切れ味に浸って読み進んで欲しい痛快な作品です。