史実でも有り得たかもしれない”彼女達”の戦い

 本作のジャンルはいわゆる”仮想戦記”に分類されると思われますが、荒唐無稽な歴史改変モノではなく、異世界の海上護衛戦(”王国(イギリス似)”の輸送船40隻を”帝国(ドイツ似)”の潜水艦から守る戦い)を描くという…なんとも燻し銀な物語です。
 しかも苦境にある”王国”側の護衛戦隊(駆逐艦・コルベット 計7隻)に乗り込んでいるのは、みな女性の軍人達(史実の英国婦人補助空軍がモチーフでしょうか?)。そこに”狂言回し役”である男性軍人リチャード・アーサー少佐が赴任し、物語は始まります。

 ハッキリ言います、この物語に色恋沙汰やお色気シーンは一切ありません!!淡々と男性であるアーサー少佐とホレイシア艦長以下の女性乗組員達の交流、そして作者様の膨大な専門知識に基づいた駆逐艦vs潜水艦といったリアルで慈悲のない戦場が描かれているだけです。この作品が故・佐藤大輔先生のRSBCシリーズ『死線の太平洋』の影響を受けて執筆されたのは間違いないと思われますが、要所要所では本家を凌ぐ程の戦闘描写が為されており、その見てきたかのような緻密さは圧巻の一言です。

 ハリウッド映画のような派手さはありませんが、読了後、埋もれた歴史に立ち会ったような気分にさせてくれる作品、つい読み返したくなる私のオススメです。

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