すれ違う想いが、過去が、心の傷を抉ってく。緻密に描かれた心理学ドラマ!

心理学を下地に展開されてゆく、海外ドラマを思わせるような女性たちの友情ドラマ。心の傷と心理学をメインテーマとして据えてありますが、専門用語なども丁寧に解説してくださっているので難解さはありません。
地の文が少し特徴的で、作者様が物語中で投げ掛けてくる問いは読み手側の思考を刺激し、自分ならどうするだろうかと考えさせられます。

物語は、心理学を学んでいる女性たちが友情を深めるため、交流している場面から始まります。
穏やかな団欒の席で突如持ち上がる、過去の「心の傷」。築かれていたはずの友情は一気に崩れ去り、彼女たちは和解を望みつつもすれ違いを重ね、それぞれが徐々に追い詰められていくのです。

傷が深いゆえに、相手を傷つけてしまう。そんなありふれているけれど哀しい現実が、これでもかとばかりに展開されてゆく。
誰にも悪意がないとしても、心は見えず過去には戻れないのですから、悲劇は起きてしまう。……それをどうやって止めれば良いのか、正しい答えを選べる者はそう多くはないのでしょう。たとえ、心理学を学んでいたとしても。

視点を変え、あるいは回想を交えて織り成されてゆく人間模様は、登場人物それぞれの立場に読者を連れていき、それぞれへの理解を深めさせてくれます。
私たちの身近でも起き得るかもしれない、見えない心の傷に起因するすれ違いと友情の破綻。それを深く考えさせられる繊細な物語です。ぜひご覧ください。

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