心理学を下地に展開されてゆく、海外ドラマを思わせるような女性たちの友情ドラマ。心の傷と心理学をメインテーマとして据えてありますが、専門用語なども丁寧に解説してくださっているので難解さはありません。
地の文が少し特徴的で、作者様が物語中で投げ掛けてくる問いは読み手側の思考を刺激し、自分ならどうするだろうかと考えさせられます。
物語は、心理学を学んでいる女性たちが友情を深めるため、交流している場面から始まります。
穏やかな団欒の席で突如持ち上がる、過去の「心の傷」。築かれていたはずの友情は一気に崩れ去り、彼女たちは和解を望みつつもすれ違いを重ね、それぞれが徐々に追い詰められていくのです。
傷が深いゆえに、相手を傷つけてしまう。そんなありふれているけれど哀しい現実が、これでもかとばかりに展開されてゆく。
誰にも悪意がないとしても、心は見えず過去には戻れないのですから、悲劇は起きてしまう。……それをどうやって止めれば良いのか、正しい答えを選べる者はそう多くはないのでしょう。たとえ、心理学を学んでいたとしても。
視点を変え、あるいは回想を交えて織り成されてゆく人間模様は、登場人物それぞれの立場に読者を連れていき、それぞれへの理解を深めさせてくれます。
私たちの身近でも起き得るかもしれない、見えない心の傷に起因するすれ違いと友情の破綻。それを深く考えさせられる繊細な物語です。ぜひご覧ください。
お話自体はやや長めですが、テンポが良くて読みやすく、
一度読み始まると止まりません。
今回は1話めから衝撃的な展開です。
一人の少年の死。誰かが直接、彼を殺したわけではない。
けれど彼の死は生き残った人達の心に重くのしかかって、次々と波立てていく。
「そんなクヨクヨしなくてもさぁ!」という気分になってもおかしくないところ、
そう思わせず、話に引き込ませてくれるのが凄い。
一度目、何も知らずに読んだ時と
二度目、ある程度ストーリーが頭に入った状態で読むのとでは印象が異なるので
何度でも楽しめます。
……余談ですが、三章はじめの、香澄ちゃんがお皿を取り違えてしまうところはちょっとゾクッときました。
無理をしながらも、一見「もう大丈夫」を装っていたので、特に。
過去を乗り越え未来に向かって歩もうとする主人公の高村香澄ちゃんをはじめ、彼女を支える親友や知人たちの青春と友情を描いた作品です。
最初は親友たちと平和な日々を過ごす和やかな雰囲気に包まれますが、途中から一気に物語の本題へと入っていきます。その流れがとても自然で、作品を読んでいる私も思わず引き込まれてしまいました。
前作同様に作者様は重たいテーマを扱っていますが、「命の重さ」「心の居場所」などのように、続編・新作だからこそ表現出来る独自の世界観を演出されています。ですが日常をメインに話が進んでいくので、重苦しい雰囲気はありません。さらに文章の質も非常に高く、作者様が得意とするヒューマンドラマに最適な作風だと思います。
まだ公開したばかりの作品のようなので、今後の香澄ちゃんたちの展開に期待しています!