開かずの扉

@siosio2002

ウワサの真相

 私の小学校には「開かずの扉」というウワサがありました。それは、第二物品室の隣にある古びた扉のことです。

 ウワサの内容としては「中から物音がした」とか「入ると呪われる」「放課後に空いてるのが見えた」とかそう言ったものでした。あと「声が聞こえた」というものもありましたね。

 そして私は友人のT君、Y君と一緒にウワサの真相を探ることにしました。きっかけはT君が第二物品室に用事があり、その時に物音を聞いたという事でした。


 夕日が差し込む放課後、つい話しが弾み遅い時間になってしまい、みんな行くのが少し不安になっていました。ですが当時の私たちにはもう戻れないという幼稚ながらにも覚悟がありました。

「どうせウワサだろ」「何もないって」と言って強がりながら階段を登ると、第二物品室の前でした。

 そして、その隣の扉。いつもはキッチリ閉まってるはずの扉が少し空いていました。隙間の向こうには、すべての光を吸収する様な闇が垣間見えました。

 空いている、ウワサでしか聞いたことのない開かずの扉が、いま目の前で開いている。その恐怖に息を呑むとY君が口を開いてこう言いました。

「入ってみよう」

 ここまで来て、引き下がることは出来ませんでした。その時は恐怖より好奇心が勝ちました。

 ゆっくりと近づき、ドアノブに手を添え、ゆっくりと引き始めた時でした。


「何をやってる!」


 後ろから怒鳴り声が聞こえ、思わず絶叫を上げて振り向くと、そこに居たのは用務員のおじさんでした。それに気づき安心した私たちは大きく息を吐いて胸を撫で下ろしました。

 少し注意された後に、ここに来た理由と広まっているウワサを話しました。用務員のおじさんは笑いながらこう話を続けました。

「ここは第二物品室の予備倉庫だ、結構物が多くて生徒が怪我したら危ないから立ち入り禁止なんだ」

 それに続いてウワサの真相も教えてくれました。

「たまに物が崩れたりしてるからたぶんそのせいで物音が聞こえるんだろ、放課後に開いているのはごく稀に学校の仕事で使うから、それに入ると呪われるって言うのは多分これが原因だと思うぞ」

 そう言って扉を開けて、少しだ中に入れてくれた。

 部屋の端に積んであるダンボールの上には厚く埃が溜まっていた。そして少しでも動くと埃が舞って咳がの止まらなくなった。

「元々ウワサがあった部屋だから、きっと少しでも変なことがあると呪いだと思った生徒がいたんだろう」

 用務員のおじさんが笑いながらそう言って私たちを部屋から出しました。

「なんだ、そんなことだったのか」

「心配して損したぜ」

「まあまあ、無事でよかったじゃん」

「また遊ぼ」

 口々に愚痴をこぼし、それでも内心は何もなかったことに安堵感を覚え安心して家に帰ることができました。


 十年以上の月日が流れ今でも、その時の二人とは会って話しますが、そこでいつも話題になることがあります。その時は気付かず、今になっておかしいと思うこと。思い出すと全身に悪寒がします。

 ウワサの真相がなんてことない事だとわかり三人で口を開いた時、確かに俺たちの声ではないものも混じっていました。そしてひとつだけ解明されてないウワサがある事を忘れていました。

「物音が聞こえる」「入ると呪われる」「放課後に扉が開いている」

 そしてもう一つ……



「また遊ぼ」

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