最寄品ではない感性がえぐり取った日常的の一瞬

箱を壊すという、ただそれだけの行為がじわじわと胸に迫る迫力で描かれています。ある種のホラーであり、哲学であり、幻想であり、詩とも言えます。

ここにはわかりやすい説明はないし、長いタイトルもありません。最近の小説の主流の「最寄品」とは違う「買回品」あるいは店では売っていない感性があります。「最寄品」=もよりひんは手軽に購入できる商品で、どこで買ってもいいものです。いわば生活雑貨。「買回品」は探し、比較し、吟味して購入する商品です。昔のマーケティング用語です。

この小説は味わいのある作品を求める人に取っての「買回品」だと思います。