科学でも先進技術でもない、大きな力の存在。思わず深呼吸をしたくなる。

暖かく懐かしい手触りの、そしてどこか不思議な味わいのある物語です。
主人公は、小学校の高学年。お参りするとテストでいい点数が取れると噂のある近所の社の石へ、友人とお参りに出かけます。
登場人物達の話すその土地の言葉が、じんわりと心に染み入ります。そして、少し暗い境遇にある主人公の曽祖母が漂わせる優しさと、彼女の生きてきた人生がちらちらと垣間見えるような会話。それらの描写はとても味わい深く、色彩豊かです。
近所の社にある石に纏わる言い伝え。昔から、その石がどのように祀られ、祈りを捧げられてきたか。主人公は、曾祖母からそんな少し不思議な話を聞かされます。

人間の祈る力というか、そういう心の奥の大切なものが、何かに試されている。祈る→ご利益、というようなわかりやすいやり取りとは全く違う、太古から続く何かが、人間の力を見ている。
科学でも先進技術でもない、大きな力の存在。空や木々に向かい思わず深呼吸をしたくなるような……そんな独特な空気を楽しめる、深くて優しい物語です。

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