階段の百合

予鈴がセミを押しのけた。


「五限は?」


背中に痛いくらいに絡んでいた熱が緩んで、湿気が割り込んでくる。


「ダメ。離れないで」


抱き寄せる。真っ黒なつむじだけが見える。

熱い。踊り場は涼しいはずなのに、熱い。


セミの声がまた聞こえた。頭蓋骨のなかで何度も反響する。鼓膜が痛くなる。


「サボろうよ」

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