せめてそのときまでは、七瀬のからだにやわらかな血潮が流れてほしい

ヒロインの七瀬の、自らのハンディに対する偏見を経て、そうなる『運命』にあると分かっており、ある程度諦めがある描写に並々ならぬリアリティがありました。主要登場人物が物語の中で、確かに呼吸をしていました。

そんな彼女から見た作中のカフカの『変身』の解釈が秀逸でした。
そう、彼女は脳の病気で余命があり、近々死んでしまうということすら、ある程度運命として受け入れようとしていたのかなと思い悲痛な気持ちになります。

最後のシーン、それでもかかえきれないものを打ち明ける彼女の心境、朝と夜で変わる海の色、全てに計算を感じました。うまい作りでした。

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