深みを増す、壮絶な世界と生き様

この作品には前作『いつか、咲きほこる花の下』があります。

未読であれば読んでいた方がいいとは思いますが、単独でも十二分に楽しめる内容です。

異なる二つの種族の対立。迫害と殺害も辞さない排斥。他者を同じ生き物とも思わない、そうした壮絶な時代の中で、懸命に生きる若者たちを、この作品では対立の中心に突然巻き込まれた主人公・ユズの視点で描かれています。

それまで全く関わりのなかった世界。疑問を持っても目を塞いできた人々の対立を、自分の親族のこととして、突然見聞きし、自分のこととして向き合わなければならなくなった主人公と、彼女を通して見る、カゲという組織を構成する若者たちの生き様が壮絶で、読んでいるうちに彼らの息遣いを身近に感じるようになる、前作を知っていると、世界観をさらに彫り込まれた作品でした。

壮絶なシーンもありますが、それは作者様の描写の力。途中、主人公が舞いを披露するシーンは、必見です。とてもとても美しい映像を見ることができるでしょう。