ネットで見つけたストーカー
無月兄
第1話
今の世の中、ネットを通じて誰でも気軽に情報を発信できるようになった。
俺自身は今のところ何もやっていないが、他人の立ち上げているブログを見る事はある。
見るのは有名人のものが多いが、ごく普通の一般人のものだって侮れない。
今開いているブログも、接点もなければ名前も知らないどこぞのOLの書いたものだが、読んでみるとなかなか面白い。
だが読み進めているうちに、俺はあることに気づいた。
「ん?」
その時俺が見ていたのは文章でなく、それに貼り付けられていた写真だった。ある街中で自撮りしているもので、それ自体には何もおかしな所は無いのだが、背景に写っている男がどうも気になった。
それは、赤いシャツに赤いズボンを履いた、全身赤い色をした男だった。最初はその派手な色のせいで目についたのかと思った。だがどうも引っ掛かるものがある。
「こいつ、さっき他の写真にも写ってなかったか?」
このブログの人は、割と頻繁に外で撮った写真をアップしている。確かその中の一つに、同じように真っ赤な格好をした男が写っていたような気がする。
画面をスクロールさせ、いくつか前に挙げられた写真を確認すると、やはりそいつはいた。
「同じやつだよな?」
隅っこに小さくだが、さっきの写真と同じように、全身赤コーデの男が写っている。
まさかと思い、さらに他の写真を見てみる。何枚もの写真を見ながら、背景写り込んだ人をくまなく確認して回る。
するとどうだろう
「ここにもいる。ここにも……」
その赤の男が初めて姿を見せたのは数ヶ月前。それから何度も、場所や時間に関係なく、いくつもの写真に写り込んでいた。
もちろん、こんなにも多くの写真に偶然同じ人物が写り込むなんてあり得ない。もしあるとするなら――
「ストーカーか」
そう思った俺は、すぐにこのブログの人物に知らせてやろうと思った。だが、いざ書き込もうとして躊躇した。
もし勘違いだったらどうする?
掲載されている写真の背景に写り込んでいる人物の顔は、いずれもモザイクがかかっていて見ることができなかった。肖像権に対する配慮だ。
当然赤の男も、その顔を見ることは叶わず、本当に同一人物かは分からない。
だいいち、こんな目立つ奴が何度も写り込んでいたら、このブログの人だってとっくに気づいているんじゃないか。なのに何も対策をしている様子が無いのを見ると、やはりこれは別人なのではと思ってしまう。
だが、それでもやはり気になるものは気になる。知らせるべきか、放っておくべきか。
迷った俺は、結局知らせる事にした。気づいてないはずが無いと思うが、万が一と言う事もある。
『たびたび写真に写っている赤い服の人は知り合いですか?』
ストーカーと言う言葉を使うのには抵抗いがあったので、そんな一文だけをコメント欄に送り、後は受け取った側の判断に任せる事にした。
これで注意はできるし、勘違いだったらそれはそれでいい。そう思っていた。
だが次の瞬間、コメント欄に新たな一文が追加された。
最初はブログ主のものかと思ったが、どうもそうでは無いようだ。
そして追加された一文というのが、これだ。
『ばれたか』
以上でこの話は終わりだ。えっ、それからどうなったのかって?だからこれで終わりって言ってるだろ。だってあれ以降、ブログの更新がピタッと止まったんだから。
だから俺は、ブログの彼女がどうなったかは分からない。もちろんあの赤い服の男についてもだ。
彼女に何かあったんじゃないかとは、怖くて考えないようにしている。
だってそうだろ。もし本当に何かあったとしたら、俺が指摘したのがそのきっかけだったのだから。
ネットで見つけたストーカー 無月兄 @tukuyomimutuki
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