ホテル内での【##規制##】殺人事件

唖魔餅

模武光宙【##規制##】殺人事件

「あーっ、今日も仕事疲れたなぁ~」

「天誅!」

 グサッ!

「ぐはっ!」


□◆

 日本でも有名なホテル「ホテル・ナンチャラ」で殺人事件が起きた。

 当然、ホテル内では騒然となっていた。

 このホテルは口コミサイトでは毎回低評価が異常まで多いことで有名で、レビューの一つに「彼氏とこのホテルに泊まったら、全身サイボーグに改造されました」とか「ここのオーナーに私が大切にしているペットの女王蟻を殺されました」、挙句の果てに「このホテルに泊まったら、隣の部屋の人が突然世界一有名な鼠の着ぐるみを着た軍団に連れさらわれました」といった本当かどうかわからない、何かよくわからないホテルとことで有名だ。


 殺されたのはこのホテルのオーナーである「模武光宙もぶぴかちゅう」氏で、事件前に仕事を部下に押し付け、部屋に戻って何かをしてしたところ、後ろからナイフで1秒間で十一万五千百十四回刺されたそうだ。

 しかし、被害者は刺されたことに気付いていながらも、何かに集中しすぎて、そのまま出血多量で死亡したそうだ。意外にも即死ではなかったそうだ。

 

 警察の捜査は色々な意味で難航していた。

◇■

「被害者の年齢は10代から60代、死因はナイフよる出血多量によるものだと思われます」

「・・・ガイシャの年齢が広すぎねぇか!?ということは、まさかまったく検討もつかねぇというわけか!?」

 鑑識の言葉に頭を悩ますのはありとあらゆる何事件と対面した敏腕警部の銭型五郎ぜにがたごろうだ。

 彼は既に刑事歴30年を越えるベテランであるが、これまでにこのような被害者の年齢がわからないということはなかったからだ。

 警部が頭を抱えだすと、そっと鑑識が耳打ちをした。


「・・・それが被害者は【##規制##】だったそうです」

「なるほど、それじゃあわからなくても仕方がないあるめぇ」


 警部は鑑識の言葉に納得すると、ガイシャの右手にまだ流れている白い液体を見た。


「おい、こいつ。死ぬ前に一体何をしていたんだ?」

「はっ、おそらく【##規制##】いたそうです!」


 警部は鑑識のその言葉にひどく目を開いて驚いた。 


「お、おいおい!死ぬ直前まで【##規制##】いたのかよ!とんでもねぇガイシャだな~!」


 警部は被害者が死ぬ直前まで牛乳を手を器にして飲んでいたことに驚愕した。

 おそらく、被害者は背が小さいことを気にしていたのだろう。

 毎日、牛乳を飲む習慣があったそうだ。

 その時何故か、コップを使わないで手で使うそうだ。


「ちっ、どうやらガイシャは明らかに何らかの問題を抱えた、とんでもねぇ野郎っていうのはわかったが、殺人は殺人!このホテルの人間で怪しい奴を徹底的に調べ上げろ!」

 警部がそう指示すると、刑事の一人がこう言ってきた。


「警部殿!信じられませんが、どうやら今回の事件は『殺人罪』もしくは『傷害致死罪』が適用されず、『器物損壊罪』が適用されるそうです!」

「あぁ!?いきなり何言ってやがるんだ!?おめぇ!?」

 警部が怒鳴りつけると、刑事はそれに動揺することなく、むしろ


「はっ、何故か被害者には人権、いわば戸籍等がまるっきりなく、ペットとかの動物と同じ扱いだそうです!」

「意味が分からん、説明しろ!」

「はっ!端的に申し上げますと、被害者は【##規制##】だからだそうです」

「そうなのか・・・。まったく、今回の被害者は不明点が多すぎる!こういう変わった奴は誰かから恨みを買っているのではねぇのか!とにかく、アリバイがない奴を全員集めろ!」


 こうして、その日のうちにアリバイがない者が集められた。

 アリバイがなかったのは、全員だった。

 その数十九人だった。

□◆

「ってことはここにいる全員にアリバイが証明できるやつがいねぇというわけか」

 そう言うと、近くにいた刑事が頷いた。

 それを見た警部は腕を組み、溜息をついた。


「弱っちまったな。これじゃあいったい誰が犯人なのか、わからねぇぞ。こりゃ、迷宮入りだな!」

「警部さん!まだ諦めるのは早いぜ」


 そこへ入ってきたのは明智琢磨と呼ばれるまだ18歳の若い探偵だ。


「おい、明智じゃねぇか!何でお前がここに!まさか・・・おめぇ!?」

「ちがうってば!俺は単にこのホテルがどんな場所か、好奇心でたった今来ただけだ!」

 琢磨が慌てて、それを否定した。


「安心しろ、警部さん。犯人は必ずこの中にいる!」

「見ればわかんだろ。このホテルに居た奴全員にアリバイがねぇんだから」


 今回の容疑者たちの言い分はこうだった。

 最初の二人組はゲイのカップルであり、部屋で【##規制##】を行った後、【##規制##】喧嘩して互いに苛立ち、外に出たそうだ。

 同性愛者カップルの一人「立川」は廊下をうろうろしていたところ、模武と出くわし、そのまま見たくもない光景を見に行ったそうだ。それを【##規制##】しているうちに気が付いたら、オーナーが死んでいたそうだ。「猫田」も同じく同時刻に模武と出会い、「立川」と同じように見たくもない光景を見に行ったそうだ。それでやっぱりオーナーが死んでいたそうだ。

 

 別の客室に止まっていた「R-007」は前回このホテルに泊まったところ、全身サイボーグに改造されたそうだ。それでその恨みを晴らすために、オーナーが部屋いる部屋の前で待ち伏せしていたところ、オーナーがいつの間にか死んでいたそうだ。


 この旅館に勤めている従業員「佐藤」は部屋で朝食を作っていたそうだ。これを証明する者はおらず、オーナーの部屋を訪れていたときにはもう死んでいたそうだ。

 

 また、連続殺人鬼である「ホッケーマスクの蛭間」はこのホテル泊まり、この周囲で殺戮をしていた。

 その時、たまたま目撃者であるオーナーを見つかり、素早く指で彼がいる階層を調べたらしい。しかし、部屋に入る頃にはいつの間にか死んでいたらしい。

 

 その他の客も一人でギターを弾いたり、筋トレしていたりと単独行動しており、やはりどの人物も最終的にオーナーと接触しており、いつ間にか死んでいたそうだ。


「おい、全員容疑者ってどういうこった!?しかも、連続殺人鬼までいやがるぜ!」

 警部はそう言うと、手錠を十九個取り出した。

「お前ら全員署まで来てもらう。詳しい話を署で聞かせてもらおうか」

「待ってくれ!警部さん!これを見てくれ!」

 そう言って、制止したのは琢磨だった。


「どうしただ?明智?何を見ろって?」

「被害者の手を見てくれ」


 そこに書かれてあったのはダイニングメッセージであった。

「こ、これは!?」

「重要なのはここに書かれている言葉だ!」


 そこにはこう記されていた

『もぅまぢむりぃ。このまま死んじゃうのかも。

 でも、ただで死ぬのはほんと無理っす。

 そうだ、ダイニングメッセージでも残そうっと

 でも、普通に書いたらつまんなくね?

 せや!謎解き風にしよう!

 えっとそうだな、犯人は□□さん!

 やべぇ、これじゃあヒントにならねぇ

 しかも、目の前真っ暗になってきやがったww

 迷宮入り確定だなww

 あっ、やべ。意識が…。

 じゃあ、ヒント!

 お菓子などに入れると甘くなる奴ね!

 わかった人!

 正解は…』


 そこでダイニングメッセージは途切れていた。

 おそらく、そこで力尽きたのだろう。


「全然、余裕じゃねぇか!」

「ああ、被害者はどうやら1秒間で十一万五千百十四回も刺されながらも、これを書いている余裕があったみたいだな!」

「そんな暇があったら書け!だが、これが本当の確立は極めて低いぞ!」

「そうなんだよ。普通は即死なんだよ。でも、この被害者は死ぬ直前まで牛乳を手で飲んでいるから、右手に牛乳が残っている。しかも、最初それで書こうとしたんだろう。指の先には赤い血以外にも白い液体が付着している」

 琢磨がそう言うと、警部は納得した様子で頷いた。

「なるほど」

 琢磨は続けた。

「それにこの被害者の文字は独特で他の人間にはない特徴を持っている。彼が間違いないだろう」


 琢磨の言うとおり、模武の字は強烈なインパクトを与えるほど独特であるが、かろうじて読めるものであった。さらにオーナーが書いた手書きの書類ともそれが一致していた。


「じゃあ、犯人は・・・?」

「ああ」

 琢磨は犯人を指で指した。


「犯人は佐藤さん!あんただ!」

「!!」

 佐藤と呼ばれた従業員は驚きのあまり目を見開き、顔をうつむいた。

 しかし、すぐに不適に笑い出したのだ。


 まるで、この事態がおかしいように。


「クックック、ばれちゃ仕方がない。そう、私がこの事件の犯人。奴は私が飼っていた女王蟻を踏み殺した!復讐のために奴のホテルの評判下げてやったのさ!ついでに殺しておいた!」


 しかし、佐藤が自供したのと同時に逮捕された。

「納得はいかねぇが『器物損壊罪』の現行犯で逮捕する。夜の十一時十四分五十四秒被疑者確保」


 警部はそういうと、佐藤を連れて行った。


「オデヒトモットコロシタイ」

「うるさい、お前も来るんだ!」


 ついでに連続殺人犯の「ホッケーマスクの蛭間」も殺人罪逮捕された。

 割と抵抗しないで、素直に逮捕されていた。


「何で俺も?」

「うるさい!お前は【##規制##】だ!」


 ギター弾きも何らかの事情で逮捕された。

 何の罪かは気にしてはいけない。


 こうして、事件は幕を下ろした。

 しかし、この日を境にホテル・ナンチャラは何者かに爆破され、瓦礫の山と化している。


 しかし、聞こえてくるだろう。

 筋トレばかりをしていた男が脱出するのを忘れていたのだ。


 彼はひそかにプロテインとドーピングの限りを尽くし、進化していた。

 そして、上半身だけを鍛え上げた姿で瓦礫の山から復活を遂げたのだ。


「I'll be back!」

「知らねぇよ!」

 琢磨は筋肉男に鎌で刺し、出てきた魂を回収した。


 彼は実は人間ではなく、死神である。

 琢磨は事件が起きる場所を事前に察知しているから、今回の事件に来られたのだ。

 魂回収も兼ねて、謎解きを行っているのだ


「次はどんな事件があるのかね、もっとも今回みたいなのはごめんだが」


 そう言うと、琢磨はどこかへと旅立った。

 新たなる謎を求めて。


「I'll be back!」

ちなみに琢磨は筋トレ男の魂の回収を忘れていたそうだ。

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