第4話 チームナゴムの正体
チームワードは、徹底してアローへのパスをカットする。アローの覚醒を許さない。と思われたが、チームワードのメンバーに油断が生まれる。
これだけリードしていれば、スタミナを温存するのもセオリーの一つ だ。しかし、相手はあのアローだぜ。僕は覚醒したアローと、力比べして見たかったのだ。
この世界が消えようとも、今この時の楽しさは本物だ。アローは、生き生きと連携を楽しむ。アローは、まだ試合を捨てていないぞ。
「ホシと出会えて、重いボールを知ったよ」
アローの猛攻は続く。ワードも驚く。
「これがアローの連携のパワー。ぼっちの力か。だが、もう遅かったな」
楽しい試合だ。アローもきっとそう思っている。これで、アローとはこの世界でなかったこととなるのか?
十五対三で決着。謎の声が聞こえる。
「この世界が無くなる? そんな訳がないだろう。この世界は再生し、ホシ達の世界を侵食。更には奪っていく」
「誰だ?」
と、僕は不意を突かれた。謎の男は言う。
「俺の名はルース。『ガイコツ』を研究している。約五十年前に存在した、連携の神『チームガイコツ』のメンバーを知っているか? まず、チームナゴムはチームスターに挑む。その試合を、よく見ておくのだな」
ルースは言いたいことだけ言うと、人波へと消えた。僕にはよく解らない。
「ルースとやらは何がしたかった? まさかアイツが、データ管理システムホシにアクセスしたのか!」
ユキは困惑の表情。
「そんなことってあるの? もしかして、私だけ『違った』の?」
ユキは、ルースの言葉をある程度理解したらしい。だけど、困惑のユキに問うていいものか?
ワードは考える。
「チームガイコツのメンバーだと。確か伝説の怪物に、最高の環境を与えたメンバー。ホシとユキは、ループ世界のどこからかやって来たと思っていたが、ハズしたのか? 考えられるのは、チームナゴムの最後のメンバー達と、共通点が多い。そして、ユキは該当しない。ホシを確保したのは正解だ!」
そんなことって、あり得るのかよ。僕は信じないぞ。ユキとワードの解説は、『チームナゴムのメンバー』達は、チームガイコツのメンバーの転生した選手達ということ。憶測の域を出ていない。だから僕は信じない。
そんな時、データホシに三通のメールが届く。
一つ目は、ナゴムからだ。
『テツってやつ、かなり重症だぜ。昔のホシと同レベルのぼっちだ』
何故か僕はホッとしている。僕みたいなのが、他にもいることが判ったからだ。
二つ目はルース。今度は名前つきだよ。
『楽しいかい、ホシくん? どんな選択も、どんなループ世界も、『同じ』なんだ。どんな不幸が訪れても、時は進む』
ルースのメールは、今は置いておこう。意味も解らない。
三つ目はヒカリだな。
『ルースとホシ達は、出会ったのね。今は確信がないので考えない。『パラノート』というノートをユキに作って貰いたいな』
ヒカリもルースを知っている? でも、今やるべきことではないな。パラメータノートって、手本システムの時のヤツを応用したもので、当たってるよな。
僕とユキは、ループルームに帰還した。だが、そこで待っていたのはワードだった。
「おかしな部屋があると思ったら、やはりホシとユキは『この世界』の者ではないなあ」
ユキは首肯く。
「うん。そうなるね」
ワードはニコリとして言う。
「別に二人を責めてるのではない。俺も無関係ではないってことで、知っていることを教えて貰う。出来る範囲でいい!」
そこで僕とユキは、ある程度ワードに状況を話す。
このことを、ヒカリはどう思うだろう? ユキは言う。
「この事態は、ヒカリの計算通りだね」
ワードは疑問を問う。
「パラノートって、よく解らないぞ。手本システムとかも解らん」
ユキは説明する。
「ワードなら解ると、思ったけどねえ。ホシも、よく解らない顔してるし。ノートに超人化した選手のデータを写すの」
ワードは大体理解したようだ。
「つまり、そのノートを読むことで、ノートの元となった選手のデータと同じになれる。だが、仮想空間に過ぎないため、試合でパワーアップすることは出来ない。それは残念だな。俺は、発展した連サカ選手のノートが気になるな。おっと、ホシはまだ理解していない。俺の勝ちだ、ホシ」
ユキは呆れている。
「ワードの理論から言うと、ユキさんの勝ちだけど」
ワードは、オオカミとマコトのパラノートも、作りたいらしい。パラノートはあくまでも対象の選手を手本に、トレーニングするものだ。手本システムよりは、パワーアップしているけど。
ヒカリは、まだ能力の低いプロリーグの選手も、強化したいのだろう。オオカミのパラノートなら、知識を深めるのに効果がありそうだ。マコトのパラノートはどうだろう? 僕には、マコトと相性が悪いようにとれる。トップクラスの選手でも、万能型は少ない。弱点を埋める効果も、ありそうだなあ。
パラノート製作中に、オオカミは驚く。
「ルースって、チームガイコツのメンバーの一人と、同じ名前だ」
「そう言えば」
と、ユキとワード。マコトは話についていけない。僕もだ、マコト。
オオカミは、ルースの特徴を思い出す。
「ルースって、圧倒的ドリブルと、それで強化されるシュートを持つ。個人技に特化していた」
四人とも、僕を見て言う。
「フルネームは、ホシ・ルース。チームガイコツにおいて、ガイコツの最大の相棒と言われつつ、消息を絶ったという話だな」
ついでに、ルースという選手はぼっち説が流れている。
解っているさ、みんな。僕とルースの共通点が多いと、思っているハズ。もし本当だとして、チームガイコツのメンバーは『転生』したのではないのか? ルースは何故今も存在している? これはおかしいぞ。
取り敢えず、チームナゴムとチームスターの対決は近い。僕がいなくても、チームナゴムは勝利出来るのかは気になる。チームワードは、パラノートで強化しながら決戦の時を待つ。
ユメわわわわⅡ 大槻有哉 @yuyaotsuki
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