ユメわわわわⅡ
大槻有哉
第1話 マブいキミへ
一方その頃、主人公ホシは大きな問題を抱えていた。
「楽しさP(ポイント)が四十パーを切ってしまった。最近まで五十パーをキープしていたのにな。コン王国で何かが発生している!」
僕はつぶやく。
「アクセス先が全てダミーだぜ。これは『何者か』が、僕に忠告している。ダミーで逃げるということは、足を残しているということだからな」
僕の人生の目標は、多くの人々に楽しいと思ってもらうこと。厳しいスポーツの世界では、不可能なことは知っているよ。でも僕は少しでも実現したいんだ。
ヒカリの声が聞こえてくる。かつてチームナゴムに試合を挑んだ女性選手だ。ユキとの縁も強い選手。ヒカリの正体が、『ループドクター』だったことには驚いたけどね。とにかく、声を聞くぞ。
「データ管理システムホシ君。エラーの原因は、半分近く解っているわ。『テツ』という選手がキーを持つ」
「少し待て、ヒカリ。テツという名前の選手は四人もいるぞ」
と、僕は突込みを入れる。ヒカリはため息。
「はあ。チームナゴムのメンバーは、何処にいるの?」
「んー。特訓中だが、僕が呼べば集まってくれるよな?」
ヒカリは少し頭を抱える。
「ホシはいつまでもぼっちなのね。自信を持ちなさいよね。私からメンバーに連絡入れとく」
「助かったぜ」
僕はまだ成長しきっていない。だが僕は、連サカのプレーで恩を返すさ。
メンバーは揃った。クソッ。僕の時はもっとみんな、いい加減なのに! テツ選手はヒカリによると、ワードと同等の才能を持ち、『スター』の『体の傷』らしい。スターの分身であるテツ選手だが、ヒカリは彼に『責任』はないと言っていた。ついでにテツ選手はスターと同じくぼっちらしい。
ヒカリはさらに言う。
「テツ選手は体の傷を持つため、『最強の連携』の使い手ね。ホシの体の傷は治ったから、今のホシには発動出来ない」
ユキが口を挟む。
「私は消えていったホシの体の傷の分まで、楽しく生きるよ」
僕は思い出し、ユキに報告する。
「『後悔』するなよと、言ってくれたんだ。あの傷の言葉で、僕は繋がっていった。僕の体の傷は、満足したから治ったんだよ」
「全部今のホシのために、体の傷は存在していたと思うことに、私はしているよ。私にも後悔して欲しくないんだね」
ここで、ナゴムが中断させる。
「ラブコメのところ悪いんだが、現在コーチのサトウから、◎三人 ○二人の新人選手の評価を聞いた。その中にテツ選手がいたんだ」
サトウコーチは、チームシロップでシロップの相棒だった選手。まず、状況を確認するぞ。
ループドクターのヒカリのループ機能の再現率を上げることで、様々なトラブルを回避出来るらしい。未来砂漠化は、この機能で今のところ凌いでいる。
ヒカリは少し意外な名を上げる。
「伝説の怪物『ガイコツ』は、現在へと再生しようとしているわ」
青山と赤山が平然と言う。
「チームアローにガイコツならこっぴどく負けたぜ。警戒することもない」
だがヒカリによると、『死んだデータ』どころかとガイコツはニセモノだったという。かつてスターは、最高の環境にいたガイコツがまぶし過ぎて、自分自身の『理想』の中で苦しみ続けたという。つまりスターは、ガイコツに成りたかったのだ。
環境を作れなかったスターは、ガイコツから逃げ続けたのだった。つまりは、テツ選手とガイコツには大きな関わりがあるということ。本人は理解していないらしいがな。
それと楽しさPの低下は関係ありだろう。選手達の楽しさの目安である楽しさPだが、観客の影響もある。
林はゆっくりと促す。
「ヒカリよ、そろそろ本題に入ってくれ」
ヒカリは首肯く。
「ガイコツについては、まだ情報が少ない。目的も明確ではない。ならば問題に備えること。楽しさPが低下したということは、もう戦いは始まっている! ループの再現機能を使い、データを集めて欲しい。チームナゴムの成長も重要としたプラン。目安として八十五パーは超えたい。現在七十二パーの再現度よ。理想は九十八パーセント」
青山は、完璧を求めるヒカリの言動に疑問を持つ。
「何故、理想が百パーではない、ヒカリ?」
ヒカリははっきりと言う。
「理論上不可能だから」
僕もはっきりと言う。
「チームナゴムは、そう思われたことも実現してきた」
ユキもヒカリも首を振る。
「それには、プロの選手達が手を抜いてわざと負けるデータも欲しいんだよね、ヒカリ?」
「そうね。試合でチームヒカリがチームナゴムに破れた時、私は次は負けないと強く思った。つまり私の理想は百パーではない。私自身が許せないの」
メンバー達は、それ以上追及する意味がないと悟った。そしてループ再現により、あり得ないようなパターンが出来上がる。七十二パーでは、予測出来ない事態も多く、危険値も高いぞ。ヒカリは研究を楽しんでやがる。
二人組を作り、ループ再現に僕達は挑むことになる。連絡はメンバー間でとれるとのこと。二人ということは、僕達は『反発する力』でつながることは出来なくなる。
ガイコツが反発する力のオリジナルだ。僕とユキ。ナゴムとテツ。ホラーとコウ。林と青山。おいおい、一人忘れてないか? ヒカリは平然と言う。
「余った赤山には、特別メニューが用意されているわね」
僕が余った訳ではない。これは凄いことだ。ユキがいて良かったぜ。
ユキがニヤリと笑う。
「赤山が余るのは外したなあ。私は林だと思ったんだけど。ぼっちホシとぼっちテツの二人は、ヒカリが気を使うことは解っていた!」
ヒカリは真面目に言う。しかし、赤山は不満がありそうだ。無視してヒカリは続ける。
「『二人』の選手を赤山にはコーチして欲しい。赤山以外では開花しない二軍選手よ」
そう言えば、ヤマトの国の手本システムでは、赤山の人気は低いと聞いている。それに該当する選手を、ワードは知っていると言っていた。名は『サクラ』だった。
ワードは二流の選手だとサクラ選手を見下していた。ワードが名前を覚えているということは、赤山に近いレベルと判断したということ。今はまだ開花していなくともな。
もう一人は、何者だろう? ヒカリは赤山の重要性を知っている。個人レベルでも、青山と赤山はトップクラスだからなあ。赤山は青山を見て言う。
「青山は林と決着を着けておけ。林の『意地』というスキルを打開する術はある。手本システムでは物足りないとサクラ選手は言っているんだったな、ヒカリ」
赤山をここまで信用するサクラ選手が、僕は心配でならない。本気になれよ、赤山!
で、僕とユキはどうするんだろう? ループ機能で何をするのかまでは、僕には解らない。ユキは僕に言う。
「主スターはね、ガイコツがまぶしいって言えなかったんだ。ホシはナゴムに言えたよね? 私はホシとの連携値を上げるよ」
ユキは僕に必要だと言ってくれたから。ユキはぼっちではなく、仲間がたくさんいるし、仲も良い。それでもユキは僕を『特別』だと言う。体の傷達と何があったかは知らないけど、僕も何時かユキを見つけるよ。ただぼやけているだけの気持ちとはさよならだ。
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