第4話

翌日・・・僕は、不動産ふどうさん屋に電話をかけた。


最初は、担当者とは別の人が出た。担当者にかわってもらい、

ふたたび会話に出る。


「はい、もしもし。賃貸ちんたいの件、お考えいただけましたでしょうか」


「あの・・・今週の土曜日に予定していた契約・・・キャンセル

させていただけませんか」


「あ、キャンセルですか。はい」


「・・・僕の一人暮らし、白紙はくしになったんで」

「わかりました。では、またのご利用をお待ちしております。」


そう言って、会話は終わり・・・僕のひとつの夢が終わった。


その夜、僕は母に、衛星放送のお金と、ジムのお金をねて支払った。

それほど、心に余裕ができていたのだ。


僕のワガママで数十年前、設置してもらった衛星放送のアンテナ。

僕が週一しゅういちでかよっているジム。

今までは、母が支払っていた。

それを、僕が社会人になった途端に、「あんたは社会人なんだから、これからは自分で払ってくれ」とせがんできたので、とりあえず衛星放送のお金は払っていた。


その後も、僕がジムへ行かない日には、母が

「あんたウィークリー会員だけどさ、あんたがジム行く費用、あたしが

月々つきづき支払ってるんやよ?」

「これからは、おれに払ってほしいのか?」

「そーゆーわけやないけど、行かんなんてもったいないやん?」


そういうわけで、ジムの月会費も、支払うようになるのは今回がはじめて。


そんな苦労をしていたんだなあ、と思う気持ちはある。でも・・・

母の足元を見るような態度には、違和感をおぼえてしまった。


「あのさ、おれ・・・一人暮らし諦めたわけじゃないけど、保留ほりゅうにしたから。だから、これからはお金毎月まいつき払うから。」


「ふーん、まーウチにいたほうがいいわ。お金はたまらんから。

洗濯機とか、ソファーとか買うと、10万円くらいかかるで。そんなてい

家賃とか払っていくのは大変やからねえ」


調子にのんな。


そう思ったけど、言うのはやめた。


干渉かんしょうするのはやめた』と言っておきながら、父も僕におせっかいを続けることに

なった。

毎月コンビニで号外される、アイドルの特集が載った新聞を、毎月父は

買ってきてくれる。


「●●●ぉ、アイドル新聞買ってきたぞー」


父が僕の名前を呼ぶ。読まんというのに。


そういうわけで、いつもと変わらない日々を過ごせるありがたみよ。

そう思うことにした。


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うしろゆび、さされびと。 黒田真晃 @fykkgoghhlhl

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